全国書店新聞
             

令和6年3月1日号

「ロス対策」「RFID」「転売抑止」万引防止へ3つの取り組み/万引防止出版対策本部〝成果と課題〟/寄稿=阿部信行事務局長

 日書連など6団体・1企業で構成する万引防止出版対策本部(出版万防、矢幡秀治本部長)は昨年12月11日、東京・千代田区の出版クラブビルで第7回総会を開催した。矢幡本部長は「利益確保のため万引をはじめロス対策に力を入れたい」と述べ、①万引品の転売抑止②RFIDタグを活用した万引防止の研究③ロス対策士の普及――に取り組んでいることを説明した。今回の総会の事業報告や活動方針の概要について、阿部信行事務局長に寄稿してもらった。

[ロス対策士検定試験の受験促進/書店関係者の合格増える]
 【矢幡秀治本部長の冒頭あいさつ】
 「新型コロナが5類になって人流が増えるに伴い、万引も増加している。出版万防ではインターネット市場における転売抑止策について他業界の事例をもとに研究している。PubteXが進めるRFIDタグ事業については、実証実験を行っている書店と情報共有を図り、万引防止に活かすため研究を進めている。また、万引など小売店舗でのロス対策のための知識と技術の向上を図るため、ロス対策士検定試験の受験促進に努めている。これまでロス対策士の合格者数は計600名余だが、書店・出版関係者で約40%を占めるに至っている。売上が減少する中、利益確保のためロス対策に力を入れたい」
 【事業報告】22年10月1日~23年9月30日
 1、書店の外的環境への働きかけ
 1)不正出品の抑止策の構築
 ①万防機構インターネット委員会への書店オブザーバーの参加促進
 ・この委員会では、インターネットを利用した万引品処分市場の実態把握と対策、インターネットオークション、フリマアプリおよび新古品買取市場に対する適正化の推進などの活動を行っている。
 ・万防機構会員書店4法人がオブザーバーとして委員会に参加した。
 ・他業界の小売店が万引被害品を自ら検索して転売されていると思われる状況を確認。メルカリやYahoo!と協働して「啓発メール」を発出し、抑止している実践事例を体験した。
 ・啓発メールの発出により、23年6月8日時点で利用制限、出品停止、逮捕を合わせて22件の成果が出ている。
 ②万防機構インターネット委員会へ複数同時検索システムの開発を提言
 ・渋谷書店万引対策共同プロジェクト(渋谷プロジェクト)の被害実態から階層的に検索して不正出品者の特定を試みたが、同一商品が多く不発に終わった。しかし過去において特徴的な商品をターゲットにした事例では、不正出品者の特定に成功している。
 ・書店でこのような対応は困難との声が多かったが、万防機構では過去にこの方法を実施し、各地域や沿線での敢行者を捕捉・警送している。
 ③「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益保護に関する法律」(取引DPF法)
 ・書店を装って多分野にわたる出版物を出品する個人に対し、取引DPF法を活用して出品者を個人と業者に峻別したことを端緒に不正出品者をあぶり出し、プラットフォーム側に開示請求をかけることで万引を抑止する方法を模索した。
 ・取引DPF法を活用する件で、同法の策定に関与した弁護士の見解を確認したところ、同法は通販による被害者個人を対象としたもので、第三者からの開示請求は不可能と判明。しかし弁護士からは、今後、消費者庁に出版物の大量被害がある実態を伝える場を設定するとの確約を得た。
 ④万引品転売収益への「課税」から「抑止」へのアプローチ
 ・年間20万円を超える所得から発生する納税義務についてインターネット事業者から不正出品者へ告知し、万引を抑止する方法。
 ・この件に関し税務当局と懇談の場を設け、被害情報を提供した。出版物等のインターネット上における転売に限らず、メディアで報道され税務当局のホームページでも公表されている通り、この件に対する税務当局の動きが確認された。万防機構の顧問税理士も具体的な事例を確認した。
 2)万引防止のためのRFID普及に向けた働きかけ
 ①22年10月19日、講談社、集英社、小学館と丸紅グループが設立した合弁会社PubteXのショールームを訪問。以降、「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」(書店議連)の活動と動向を注視した。
 ②23年8月、講談社、集英社、小学館のコミックスへのRFIDタグの挿入が開始され、実際に挿入されていることを確認した。
 ③PubteXのRFIDタグ装着商品のトライアル導入店に大垣書店kotochika御池店(京都市)、有隣堂伊勢佐木町本店(横浜市)がなったとの情報から、両書店に対し今後の情報共有と万引防止策の検討を申し入れた。
 2、書店の内的環境への働きかけ
 1)ロス対策士養成の呼びかけと受験の促進
 ①日書連および会員組合へ、ロス対策セミナーとYouTube配信セミナーへの参加を促進した。
 ②23年10月の東京組合理事会、12月の日書連理事会で、万防機構LP教育制度作成委員会の近江委員長によるセミナーを開催した。
 ③東京組合は会報「TOKYO書店人」にセミナーの内容を全文掲載。出版万防はそこから抜き刷りを作り、セミナー開催の促進に活用している。近江委員長の講演は経営にどのように反映するかも語られていると好評を博している。
 ④書店新風会に会としての受験を促進した。
 ⑤ロス対策士検定試験の書店関係受験者数は336名、占有率は37・5%。書店関係合格者数は前期より52名増の260名、占有率は43・1%。書店関係合格率は77・3%。
 2)渋谷プロジェクトのノウハウの水平展開 
 ①MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店が23年1月31日に閉店したことに伴い、渋谷プロジェクトは従来の3店舗体制から大盛堂書店と啓文堂書店渋谷店の2店舗体制となっている。
 ②2店舗体制になってからの、9月現在の万引被害状況は以下の通り。登録人数21人(前年比8人増)、事案数35件(同19件増)、再来店数16件(同13件増)、再来店率45・7%(同27・0ポイント増)、抑止数9人(同7人増)、抑止率34・6%(同14・2ポイント増)。

[RFIDタグ 万引防止に活用/PubteX実証実験書店と情報共有へ]
 【事業計画】23年10月1日~24年9月30日
 1、書店の外的環境への働きかけ
 1)不正出品の抑止策の構築
 ①万防機構インターネット委員会への書店のオブザーバー参加を継続して促進する。
 ・他業種での被害品転売対策実例を確認し、RFIDタグ導入後の自店対策の参考とする。
 ②不審な出品に対する牽制メッセージの発信による転売抑止の実施
 ・不正出品と思われる事例収集のため、自店被害事実の共有に賛同する書店を開拓する。
 ③インターネット委員会へ複数同時検索システム開発を継続提言
 ④古物営業法の厳格適用や、その他法律の適用による万引抑止研究
 ・現行法内で適用可能な法律と限界の確認。
 ・インターネット事業者への万引商品転売を阻止するための方法が古物営業法を通じて見出せないかという要望が書店からあったため、研究課題とする。
 2)万引防止のためのRFID普及に向けた働きかけ
 ①トライアル導入店の大垣書店と有隣堂に対し、1年経過後のヒアリングを実施する。
 ②RFIDタグを活用した万引防止ノウハウの調査・研究を両書店とともに行い、水平展開を図る。
 2、書店の内的環境への働きかけ
 1)ロス対策士養成の呼びかけとロス対策士検定試験の受験促進
 万引被害から自店を防衛するためには抑止力の強化が必須。某チェーンではすでに総店舗数の50%の店長が資格取得しており、その中の精鋭が各店舗の巡回に当たっている。ナショナルチェーン、リージョナルチェーン、書店団体、取次経営書店など、すべての業態の法人にロス対策士検定試験の受験を促進する。
 2)セルフレジ導入時の万引対策の研究と普及
 セルフレジ利用時の不正行為は万引だけでなく、「窃盗罪」はもとより「器物損壊罪」「電子計算機使用詐欺罪」に当たる行為がある。先行する研究を紹介・普及していく。
 3)渋谷プロジェクトのノウハウの水平展開
 顔識別機能付きカメラシステムの活用に関する個人情報保護委員会の公表資料「犯罪予防や安全確保のためのカメラ画像利用に関する有識者検討会報告書」「犯罪予防や安全確保のための顔識別機能付きカメラシステムの利用について」「民間事業者向け カメラと個人情報保護法」を活用し、水平展開を図る。
 3、新古書店部会創設への継続的取り組み。
 ・リアル新古書店への盗品持ち込みも継続していると考えられ、同部会創設へ協議を続ける。
 4、研究課題
 1)仕掛学の継続研究
 万防機構が推進する、大阪大学大学院経済学研究科・松村真宏教授が提唱する「仕掛学」の活用による万引対策のテスト導入だが、活用書店を開拓する。
 2)業界万引防止キャンペーンの研究
 【相賀昌宏副本部長の閉会あいさつ】
 「アメリカの小説家ジェフリー・ディーヴァーの『ハンティングタイム』を読んでいたら『heuristic』という単語が出てきた。ディーヴァーによれば『完璧さを装うことなく問題を解決するテクニック』という意味だそうだ。出版万防の活動も、答が見つからないときはある程度やってみることが大切。その中から新しいチャンスが生まれてくる」

能登半島地震 被災書店義援金受付/石川県書店商業組合

◇義援金の振込先
  北國銀行 大桑橋支店
  普通預金 0046491
  口座名義 石川県書店商業組合能登半島地震義援金

奈良組合/書店と図書館巡るスタンプラリー 好評/図書カード当選者100名決める

 奈良県書店商業組合(林田芳幸理事長)は2月1日、大和郡山市のディーズパークで第3回理事会を開いた。
 23年12月10日~24年1月15日に実施した年末年始恒例「奈良県の図書館で本屋さんでスタンプラリー」キャンペーンの抽選会を実施し、総額10万円の図書カードを贈る100名の当選者を決めた。
 このキャンペーンは、参加している図書館の利用や、書店で本・雑誌を500円購入する毎にスタンプが1つもらえ、スタンプを4つ集めて応募すると、抽選で100人に5000円~500円の図書カードが当たるもの。少なくとも1つは書店のスタンプが押されている必要があり、より多くの図書館や書店に足を運んでもらえるよう異なるスタンプが多いほど高額商品の抽選対象となる。
 今年のスタンプラリーの応募総数も1729件と好評で、図書館の参加も昨年より6館増えて25館になった。
 理事会では林田理事長があいさつ。「能登半島地震では多くの書店が営業できなくなった。一方、再開したところでは長蛇の列ができ、書店の存在が改めて注目され勇気づけられたと聞く」と話し、「頑張って書店を存続させていこう」と呼びかけた。
 この日の募金分も含め6万円の義援金を能登半島地震の被災地に贈ることにした。
 次回理事会は4月10日に開く。(靍井忠義広報委員)

訃報

 玉山 哲(たまやま・さとし=岩手県盛岡市・東山堂代表取締役会長、日本書店商業組合連合会理事、岩手県書店商業組合理事長)
 2月14日に死去した。75歳。通夜は18日、葬儀は20日、故人の生前の遺志により近親者のみ家族葬で執り行った。喪主は妻の美重子さん。
 なお、後日「お別れの会」を執り行う予定。

連載「春夏秋冬 本屋です」~石原良純氏 来訪~/服部義彌(京都・宮脇書店亀岡店 代表取締役)

 わが亀岡市の亀岡商工会議所は創立50周年を迎え、先日、記念式典が執り行われました。私は分不相応ながら副会頭を仰せつかっております関係で記念講演会を担当させていただきました。
 講演会は市民公開で行うことになりましたが、いったいどなたにご講演いただくのが良いか。あまり堅苦しい経済の話などでは集客できないし喜んでいただけないだろうと人選に苦慮するかと思ったのですが、早い段階で石原良純氏のお名前があがりました。しかし、ご存じのように色々な番組に引っ張りだこで見ない日はないほどのお忙しさを感じていたので、ご承諾いただくのはちょっと難しいのではないかと思っていました。ところが意外にもエージェントを通じて依頼するとOKの返事がいただけて、石原良純氏講演会が実現する運びとなりました。
 年末に広報して参加予約(入場無料)を開始すると、あっという間に500名を超えるお申込みをいただき満席となりました。さすがに良純さん人気は高いなと感じるとともに人選に間違いなかったなと胸をなでおろしました。
 当日の講演は「気象から環境問題について熱く語る」と題して家族の絆についてまで良純節全開の楽しいお話しで大満足の講演会となりました。テレビで見たままの感じでとても気さくな方でした。
 最後に、1年間拙文にお付き合いいただきありがとうございました。

東京組合「本屋巡り謎解きゲーム」/第1弾1691人、第2弾4208人が参加/オリジナル小冊子 来店客に配布

 東京都書店商業組合(矢幡秀治理事長)は2月5日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。  
 謎解き・デジタルサイネージ特別委員会は、加盟書店で展開中の「黙示録の四騎士×本屋巡りLINE謎解きゲーム」について、1月29日の時点で第一弾(昨年10月17日~2月12日)の参加者数は1691人、第二弾(同12月1日~2月12日)は4208人に達したと報告。あわせて特典のオリジナル小冊子は参加店におよそ25万冊配布しており、配布期限は設けていないので購入者に限らず来店客に配布してほしいと説明した。
 また、デジタルサイネージは75店舗にディスプレイを設置しており、来年度以降の事業継続に向けて、1月16日の新年懇親会で来場出版社に説明を行ったと説明。2月上旬に行う一般来店者向け(日本図書普及の協力で先着100名に図書カードネットギフト1000円の特典)ならびに設置書店向けアンケートへの協力を要請した。
 総務・財務委員会は、能登半島地震で組合加盟書店および各支部から義援金を募り、組合で集約して石川県書店商業組合の義援金口座に入金するとして協力を求めた。
 5月20日に東京・千代田区のホテルメトロポリタンエドモントで開催する第48回通常総代会に関しては、開催に伴う委員会、理事会、監査会の日程案ならびに支部や委員会が提出する関係書類の項目と提出期限について諮り、承認した。また、とうきょう共済の総代改選に伴い従来の2名から3名を推薦してほしいとの依頼があり、矢幡理事長、平井久朗副理事長、秋葉良成常務理事を推薦することを提案し、了解した。
 厚生委員会は、総代会の終了後に懇親会を実施するか否かを諮り、満場一致で開催を決めた。
 再販・発売日・取引委員会では、以前から日本雑誌協会の自主規準「雑誌制作上の留意事項」における雑誌付録のかさ高制限復活を求めていたが、2月14日に雑協と意見交換を実施することになったと報告した。

越石会長「書店は魅力的な仕事」/東京組合青年部が新春懇親会

 東京都書店商業組合青年部(越石功会長)は2月2日、東京・中央区の銀座クラシックホールで新春懇親会を開催し、書店、出版社、取次など約70名が出席した。
 冒頭のあいさつで越石会長は「私は辰年生まれの年男。48歳で青年部を名乗って良いのかと思うところもあるが、東京都書店商業組合では一回り上の60歳の方が現役で書店経営や組合活動で活躍しているし、そのまた上の70代の方も元気に書店を続けている」とユーモアを交えて紹介し、「70代でも続けられる書店経営は、とても魅力的な仕事ではないかと最近思っている」と心境を述べるとともに、「書店がこの先20年、30年と無くならないように、青年部として組合活動をしっかり支えていきたい。あわせて独自の企画や活動も他の道府県組合を参考に実行していきたい」と決意を示した。
 相談役あいさつでは東京都書店商業組合・矢幡秀治理事長が登壇し、「青年部で活躍された人たちが親会でも活躍し、書店業界を支えてきたのは間違いのない話。出版社、取次の方々はぜひ青年部を支えていただきたい」と呼びかけた。
 来賓では祥伝社の山下亮販売部長があいさつに立ち、「最近、若者たちが大活躍している。野球の大谷翔平選手、女優の芦田愛菜さん、将棋の藤井聡太さんの三人は特に際立っているが、共通点は本好きということ」と述べ、「彼らは小さい頃から本に親しんですごい人になったが、恐らく地元の書店で本を買っていたと思う。青年部は地域の子どもたちのために出版社からいろいろな力を引っ張り出してほしいし、我々もそれに応えることで共に盛り上げていきたい」とエールを送った。
 続いて、かんき出版・村越大将営業部課長が「これからも厳しい状況が続くと言われるが、皆さんの考えや行動でまだまだ変われる業界だと思っている」と乾杯の発声を行った。

福岡組合/能登半島地震義援金で石川組合に100万円

 福岡県書店商業組合(安永寛理事長)は1月23日、福岡市中央区の福岡県教科図書で定例理事会を開催し、能登半島地震義援金として組合積立金から100万円を石川県書店商業組合が設けた口座に寄付することを満場一致で決定した。
 第46期の今後の行事予定については、定例理事会を6月21日、8月23日、10月22日、通常総会を11月26日に開催すると報告した。
 「九州選書市2024」は9月25日、福岡市中央区の電気ビル共創館で開催予定。開催時間や内容などは同実行委員会を中心に今後決めていく。
 組織・流通委員会は組合加盟書店数について、45期は脱退9店・等級見直し2店、46期は現在のところ新規加盟7店・脱退2店と報告した。
 倫理委員会は、昨年11月15日にJR博多駅前広場で福岡県警主催「万引き防止啓発キャンペーン」に参加し、安永理事長はじめ6名がチラシを配布し万引撲滅を訴えたと報告した。今期は2月と7月に福岡家庭裁判所久留米支部の「万引被害を考える会」で講話を行う予定とした。
 教職員研修助成券は1月15日で利用期間が終了し、今回は前年同月比97・9%の消化率だったと報告した。毎回全体の10%近くが未消化のため、次回は教職員に利用促進の声掛けを行うよう呼びかけた。
   (加来晋也広報委員)

NHKテキスト定期購読獲得を呼びかけ/NHK出版「春の企画説明会」開催

 NHK出版(松本浩司社長)は2月6日、東京・千代田区のホテルメトロポリタンエドモントで「2024年春の企画説明会」を開催し、書店関係者約150人が出席した。
 田中洋取締役マーケティング局長は冒頭のあいさつで「昨年はコロナ禍での巣ごもり需要が終わり、消費動向が大きく変化した」と述べ、基幹商品であるテキストの実売減、出版物の製作資材の高騰などで厳しい決算見通しとなると報告。2024年度は「英語やるならNHKテキスト」をキャッチコピーにテキストの増売に注力する方針を示し、定期購読獲得の取り組みに協力を求めた。また、書籍も魅力的な新刊を届けるとともに、ロングセラー商品、既刊の増売施策も提案していくと説明した。
 英語テキストに関しては、『中学生の基礎英語 レベル1』『同 レベル2』『同 in English』の3誌共同で『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)の作者である宮島未奈さんの連載小説が始まる。『ラジオ英会話』では講師の大西泰斗東洋学園大学教授が登場し、新たに副教材として『NHKラジオ英会話サブノート 1日1文!集中トレーニング』を刊行すると発表した。
 書籍のジャンルでは、1995年刊行の哲学書を、現代にあわせた内容でコミック仕立てにした『グラフィック版ソフィーの世界』上下巻を5月に刊行する予定。B5判で本体予価は各2400円。また、NHK出版新書からは古代ギリシアから分析哲学までを3冊で一気通貫する『哲学史入門』全3巻(1巻/本体価格1000円、2巻・3巻/本体予価1050円)を4月から3ヵ月連続で刊行するほか、テレビ番組『プロジェクトX』が18年ぶりに復活するのにあわせて番組を書籍化し、今夏よりシリーズとして継続的に刊行。11月には『ブリタニカ ビジュアル大図鑑 宇宙・地球・生物・動物・人体・人間社会』(A4判変形、本体予価4500円)を発売する。
 最後に今年度の販促計画について説明があり、テキストの定期購読獲得コンクールは申込締切が5月31日、売り場の飾りつけコンクールは5月8日であること、店頭用拡材として「2024年度NHK語学テキスト一覧」が2月14日頃に、「NHKテキストナビ2024」およびテキストコーナー用拡材「デコキット」が3月8日頃に、それぞれ店着すること、「100分de名著フェア」を7月に実施予定であることなどが発表された。あわせて、一部を除くテキスト類を4月号より50円から160円値上げすると報告。「用紙や印刷製本、物流などのコスト増によるもの」として、理解を求めた。

第4回「こどもの本」総選挙/ヨシタケシンスケさん『りんごかもしれない』が1位/全国の小学生14万人が投票/ヨシタケさん「長く本と付き合って」

 全国の小学生に一番好きな本を投票してもらう第4回「小学生が選ぶ!〝こどもの本〟総選挙」(NPO法人こどもの本総選挙事務局主催)のベスト10結果発表会が2月10日、東京・千代田区の城西国際大学で開催された。今回は23年5月5日~9月8日の投票期間に14万4188票が集まり、ヨシタケシンスケさんの絵本『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)が1位に輝いた。
 発表会では、投票者の中から選ばれた「こどもプレゼンター」10名が投票した本と選んだ理由をコメントし、受賞した作家に賞状を授与した。また、アンバサダーを務めるお笑い芸人で作家の又吉直樹さんが受賞作品の感想を述べ、作者とのスペシャルサイン会を行った。
 『りんごかもしれない』はヨシタケさんの絵本デビュー作で、13年に刊行。テーブルの上に置いてあるりんごは、もしかしたらりんごじゃないかもしれない、大きなサクランボの一部かもしれないし、心があるのかもしれないというふうに、「考える」ことを果てしなく楽しめる発想絵本。
 ヨシタケさんは「小学生の間に読んで楽しい本はたくさんある。これからもいろんな本を読んでいっていただきたい。先のことを考える時に、『かもしれない』という言葉を上手に使いながら、楽しく過ごしてくれるとうれしい」と喜びを語った。
 『あるかしら書店』(ポプラ社)も4位に入った。ヨシタケさんは「僕は本が好きで、あんな本やこんな本があったらいいなと思いながら作った。みなさんもいつか本を作る側になってくれたらうれしい。これからも長く本と付き合ってほしい」と話した。
 又吉さんは「いろんな感覚を刺激してくれる本が揃った。みんなが『どれにしようかな』と考えた時間があって、それはすごくいいと思う。本に対してちゃんと向き合っている」と全体を振り返って講評した。
 ◇第4回「小学生が選ぶ!〝こどもの本〟総選挙」ベスト10
 ①『りんごかもしれない』(作/ヨシタケシンスケ、ブロンズ新社)、②『おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』(監修/今泉忠明、絵/下間文恵、徳永明子、かわむらふゆみ、高橋書店)、③『大ピンチずかん』(作/鈴木のりたけ、小学館)、④『あるかしら書店』(著/ヨシタケシンスケ、ポプラ社)、⑤『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(作/廣嶋玲子、絵/jyajya、偕成社)⑥『パンどろぼう』(作/柴田ケイコ、KADOKAWA)、⑦『四つ子ぐらし① ひみつの姉妹生活、スタート!』(作/ひの ひまり、絵/佐倉 おりこ、KADOKAWA)、⑧『ドラゴン最強王図鑑』(監修/健部伸明、イラスト/なんばきび、七海ルシア、Gakken)、⑨『ほねほねザウルス ティラノ・ベビーのぼうけん』(原案・監修/カバヤ食品株式会社、作・絵/ぐるーぷ・アンモナイツ、岩崎書店)、⑩『100かいだてのいえ』(作/いわいとしお、偕成社)

第28回「読売出版広告賞」/大賞に講談社「ブルーバックス60周年」

 読売新聞に昨年掲載された出版広告の中から優れた作品を選ぶ「第28回読売出版広告賞」の贈賞式が1月22日、読売新聞東京本社で行われ、大賞の講談社ら受賞社を表彰した。
 大賞受賞作の「ブルーバックス60周年」は、科学をテーマにした新書レーベル「ブルーバックス」の創刊60周年を記念したもので、9月21日付朝刊に全5段見開きで掲載された。
 ブルーの背景に「知らないことに出会えていますか?」「知らないことがすばらしい」という印象的なコピーを左右の面に分けて大きく配し、講談社が刊行する人気漫画「進撃の巨人」のキャラクターとコラボレーションしたデザインが読者を引き付けたと評価された。
 選考委員長で作家の北村薫さんは「(見開きという)新聞の形態を活かした見事な広告で、選考委員全員が大賞に推薦した」と受賞の経緯を説明した。
 受賞のあいさつで、同社出版営業第二部の砥上雅夫副部長は「世の中には知らないことが溢れており、それこそがブルーバックスの根源。数学や物理、地球科学などの分野で根強いファンの方がおり、今回の広告はファンの方たちの気持ちを想像して作った」と述べ、「満場一致で大賞に決まったとうかがい非常にうれしい」と喜びを語った。
 主催者を代表してあいさつした読売新聞東京本社の坂本裕寿・取締役ビジネス局長は「ブルーバックスは創刊以来60年、未知との出会いという、読書本来の喜びを与えてきた。受賞作のコピーは、ブルーバックスとしての創刊以来のメッセージであり、日々様々なニュースに接している、好奇心の強い新聞読者の知識欲を掻き立てるものだった」と称えた。
 大賞以外の受賞社は次の通り。
 ▽金賞 宝島社「企業広告『団塊は最後までヒールが似合う。』」(1月5日付朝刊 全30段)▽銀賞 文藝春秋「竜馬がゆく 文藝春秋100周年」(1月1日付朝刊 全5段)▽銅賞 光文社「心をととのえるスヌーピー」(1月1日付朝刊 全5段)▽特別賞 KADOKAWA「苺ましまろ」(2月25日付朝刊 3段8割)

大阪組合理事会/新年互例会の出席者数報告

 大阪府書店商業組合(深田健治理事長)は2月10日、大阪市北区の組合会議室で定例理事会を開催した。
 1月9日に開催した大阪出版販売業界新年互例会は、出版社35社42名、取次7社11名、協力会社2社4名、業界紙2社2名、近畿ブロック会4組合6名、大阪組合30名、合計95名が出席したと報告した。平成7年新年互例会は来年1月10日午後4時、大阪市阿倍野区の都シティ大阪天王寺で開催する予定。(石尾義彦事務局長)

連載「生活実用書・注目的新刊」~キャサリン・プライス『スマホ断ち』(角川新書)~/遊友出版・齋藤一郎

 スマホが人間の脳に、強い影響を与えている。
 キャサリン・プライス著/笹田もと子訳『スマホ断ち』(角川新書 900円)は副題が30日でスマホ依存から抜け出す方法である。元々スマホは依存させるように設計されていて、集中力を削ぐし、記憶力をかき回すことが分かっている。SNSでうつ病になった事例もある。iPhoneの生みの親スティーブ・ジョブズは自分の子に限定して使わせたし、ビル・ゲイツも14歳まで子には使わせなかったのである。
 本書はまず依存度のテストから始まり、目を覚まそうと呼びかけながら30日をかけて、スマホとほどほどの正しい距離を探してゆく。10日目は充電場所を変える、20日目には週末の1日だけスマホ断ちを始める。脳をハッキングから守ろう、と全ての人に呼びかける。
 アンデシュ・ハンセン著/久山葉子訳『スマホ脳』(新潮新書 980円)もスウェーデン生まれの精神科医が説くスマホの危険性である。睡眠障害、うつ、集中力、子供たちの学力低下など脳を蝕むスマホの実態を最新研究が明かす。今は噂や陰謀論がSNSであっという間に拡散されるが、人間の脳はそもそもデジタル社会に適応していない。子供のスマホ依存にも警鐘を鳴らす。