全国書店新聞
             

令和6年3月15日号

経済産業省 書店振興プロジェクトチーム設置/減少する街の書店を支援/齋藤経産相「書店は文化創造基盤として重要」

 経済産業省は3月5日、大臣直轄の「書店振興プロジェクトチーム」を設置したと発表した。全国で減少が続く書店の支援施策や活用事例を共有・発信し、施策展開が大きな効果をあげるよう取り組む。
 プロジェクトチームは、日書連の窓口である商務情報政策局コンテンツ産業課に事務局を置き、キャッシュレス推進やクールジャパン政策を担当する部署も加わって、部局横断型の組織で進める。今後、経産省の担当者と書店経営者らによる車座ヒアリングの開催を予定している。
 齋藤健経産相は同日の閣議後記者会見で、街の書店について「多様なコンテンツに触れることができる場として地域に親しまれており、創造性が育まれる文化創造基盤として重要。何も一中小企業の問題ではなく、日本人の教養を高める一つの基盤だと思っている。近年激減し、危機感を持っている」として、「今ある様々な施策をどのように活用している例があるか、創意あふれる工夫に光を当てていきたい。書店振興も経産省で当然やれる話。盛り上げていきたい」と述べた。

日書連2月理事会/能登地震で災害見舞金 石川、新潟、富山3組合に支給/石川組合・宮本理事長「励まし糧に復活へ」

 日書連(矢幡秀治会長)は2月15日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催し、会場9名、ウェブ11名、書面28名、計48名が出席した。能登半島地震を受けて、石川、新潟、富山3県の書店商業組合に計110万円の災害見舞金を支給したことが報告され、石川組合の宮本秀夫理事長(金沢市・ブック宮丸)は「皆さんの温かい励ましが復活への意気込みにつながる」と感謝の言葉を述べた。
 [政策委員会]
 ◇能登半島地震が激甚災害に指定されたことを受け、日書連「弔慰金・見舞金規程」に基づき、石川県書店商業組合(組合員数35店)に35万円、新潟県書店商業組合(同49店)に49万円、富山県書店商業組合(同26店)に26万円、計110万円の災害見舞金を支給した。1月18日に送金。
 石川組合の宮本理事長は「日書連に被災書店義援金の告知をお願いしたところ、快く引き受けていただいた。石川県の書店を助けようと、各都道府県組合や全国の書店、版元などから多くの義援金をお寄せいただいている。義援金は組合を通じて被災書店の支援に活用する。まだまだ余震が続いており、これから復旧にとりかかる書店も多い。皆さんの温かい励ましが復活への強い意気込みにつながる」と述べ、災害見舞金の支給に感謝した。
 ◇昨年10月理事会で承認された「2024年度理事会日程」で、12月委員会・出版販売年末懇親会を18日から11日、12月理事会を19日から12日に変更する。出版販売年末懇親会を予定している帝国ホテルの宴会場は当初予定の日程で空きがないため、12月の各日程を1週間繰り上げることにしたもの。
 ◇2月14日に死去した、日書連理事で岩手県書店商業組合理事長の玉山哲氏(東山堂)の冥福を祈って、出席者全員で黙祷を捧げた。
 [読書推進委員会]
 ◇4月22日~5月13日に実施する「春の読者還元祭2024」について、春井宏之委員長は「当初の認知度向上から次の段階に進み、購入冊数の多いお客様の当選確率が高まる形にしたい。そのための仕組み作りを進めている。スピードくじは継続するが、今回から応募はしおり1枚につき1度に変更する。また、しおりと店頭用ポスターは1組3630円で頒布するが、応募者を150件以上集めた書店には報奨金2860円を支給する。このため街の書店でも少ない経費負担で参加できる」と述べた。
 ◇独自企画を提出した組合に補助金を支給する令和5年度「読書推進活動補助費」は、11月30日までに11組合から申し込みがあり、1月24日の審査会で11組合に総額201万2610円を支給することを決めた。内訳は次の通り。
 ▽20万円=青森、愛知、富山、福井、大阪、京都、奈良、兵庫▽19万1500円=山梨▽17万3110円=東京▽4万8000円=長崎
 [図書館委員会]
 「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」(書店議連)の提言を受け、書店、出版社、著者と図書館の関係者が文部科学省を交えて共存・共栄の道を話し合う「書店・図書館等関係者における対話の場」は、これまで23年10月3日、10月30日、24年1月17日の3回開催された。最終となる3月6日の会合ではこれまでの議論をまとめ、結論を出す。
 髙島瑞雄委員長は、3月6日の会合で①地元書店からの優先仕入②随意契約、原則値引き無し③本と装備は別契約――の3点を改めて訴えたいと述べた。
 [組織委員会]
 安永寛委員長は、全国45都道府県組合の加入・脱退を報告。12月は加入6店・脱退5店で1店純増、1月期は加入なし・脱退13店で13店純減だった。
 12月期は福岡組合で6店の新規加入があった。同組合の理事長を務める安永委員長は「全県の組合加入状況を洗い直した。未加入店に電話や手紙で連絡をとり、加入の可能性がありそうな書店には直接会って組合に加入するメリットをしっかり伝えた」と述べた。
 [書店再生委員会]
 「事業再構築補助金」第11回公募の採択結果がこのほど公表された。今回は9207件の応募があり、2437者の事業計画が採択された。書店関係では、ザ本屋さん(北海道)の「十勝のアニメ・サブカルチャー専門への転換による地域一番店への挑戦」、サンミュージック(滋賀)の「モノ消費提供からコト消費提供へ転換を図るための、サウナ専門店への挑戦」、大利昭文堂(兵庫)の「本屋ノウハウを活かした地域商品と絵本専門ブックカフェへの展開」が採択された。
 平井久朗委員長は「一つのヒントとして参考にしてほしい」と述べた。
 [取引改善委員会]
 東京組合は2月14日、日本雑誌協会と付録問題に関する意見交換を行った。これに出席した柴﨑繁委員長は「雑協の自主基準『雑誌作成上の留意事項』で付録のかさ高制限が撤廃されて以降、付録の形状について多くの書店から様々な問題点が指摘されていることを説明した」と話した。
 [指導教育委員会]
 森松正一委員長は、万引防止をテーマに研修会を開催する準備を進めていると報告した。講師は万引防止出版対策本部の推薦に基づき選定し、6月20日の通常総会に合わせて研修会を開催する予定。
 [広報委員会]
 深田健治委員長は、全国書店新聞に記事を投稿する役割を担う広報委員の2024年度登録を、各都道府県組合からの推薦に基づいて行うと報告した。

能登半島地震 被災書店義援金受付/石川県書店商業組合

◇義援金の振込先
  北國銀行 大桑橋支店
  普通預金 0046491
  口座名義 石川県書店商業組合能登半島地震義援金

再販制度維持へ努力/出版再販研究委員会・小野寺新委員長が所信

 日書連、日本書籍出版協会(書協)、日本雑誌協会(雑協)、日本出版取次協会(取協)の出版4団体で構成する出版再販研究委員会が2月7日、東京・千代田区の出版クラブビルで開催された。14年間委員長を努めた相賀昌宏氏(小学館)が退任し、後任に書協理事長の小野寺優氏(河出書房新社)が就任した。
 委員会終了後に開かれた新年懇親会で、小野寺委員長は「再販制度の存在により、出版物が全国どこでも等しい条件で享受でき、書店も規模に関わらず等しい競争力を保つことができる。価格差がないことで出版物の価値が保たれ、時代を超えて読み継がれていく」と再販制度の意義を強調し、「これまで大変な努力で再販制度を維持してくれた関係各位に心より敬意を表するとともに、再販制度を維持するために流通改善を含めて努力していかなければならないと強く思っている」と決意を示した。
 一方で電子に代表される再販制度適用外の出版物の台頭、入札の問題、読者の裾野をどう広げるかという問題についても考えなければならないと指摘し、「今後、再販制度堅持のために公正取引委員会をはじめとする関係各省と意見交換を行い、弾力的運用に取り組む。また、この委員会の活動を通じて現代に相応しい再販制度の在り方はどういうものか、業界三者のみならず読者、著作者にとっても幸せで、出版界が持続可能なものになるための再販制度はどういうものかを皆さんとともに考えていきたい」と話した。
 取協の近藤敏貴会長(トーハン)は、「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」(書店議連)に公取委の担当者を招いて①官公庁・図書館納入の入札にあたっての値引き②ネット書店の送料無料――の二つの問題について具体的な話をしたと報告。今年は公取委からのヒアリングが増えているとして、「議論を深めて解決に持って行きたい」と述べた。
 雑協の堀内丸惠理事長(集英社)は「いろいろ課題はあるが、再販制度があるから日本の教育と文化は発展してきた。しっかり維持していくために小野寺委員長の下で皆さんと一緒に活動していく。近藤取協会長が理事長を務める出版文化産業振興財団(JPIC)は書店議連とのパイプ役を担っており、JPICを中心に書店支援の活動を行っていきたい」と述べた。
 日書連の矢幡秀治会長(真光書店)は「書店議連はJPICが力を入れており、書店を守る活動を行っている。議連の提言を受け、文部科学省が『書店・図書館等関係者における対話の場』を設け、政府も動いている。これから良い話が出てくると考えている」と述べ、書店存続を巡る政治の動きに期待を示した。
 再販制度については「教育と文化を守るために必要と、これまでいろいろな所で申し上げてきた」として、「書店、取次、出版社が生き残ることは教育と文化のためという、その根本を忘れずにしっかりと発信していきたい」と話した。
 この後、日書連の藤原直副会長(金港堂)が「相場格言では辰年と巳年は天井まで上がる年だそうだ。我々の業界もあやかりたい」とあいさつし、乾杯した。

「ロス対策士検定試験」受験対策セミナー/万引防止機構 受講生を募集

 全国万引犯罪防止機構は、第10回ロス対策士検定試験(5月16日~17日実施)の受験対策セミナーを3月25日、4月26日の2回、いずれも午後5時~8時の3時間、オンラインで行う。1回目と2回目は同じ内容。受講料は無料。
 セミナーでは不明ロス対策に必要な広範な知識を学ぶ。検定試験の公式テキスト『ロス対策テキスト2021+追補版2023―2024』を用意すればより理解が深まる。受験者に限らず、ロス対策に興味のある人なら誰でも受講することができる。
 申し込みは同機構のホームページから。https://www.manboukikou.jp/exam-seminar/
 問い合わせは電子メールで下記アドレスまで。lpj@manbokikou.jp

「BooksPRO」独立系書店も登録可能に/JPO

 日本出版インフラセンター(JPO)の書店マスタ管理委員会は、「独立系書店」のデータ収集および登録を開始し、1月30日に書店マスタ管理センターのホームページ上に登録フォームを設けた。
 同センターは会員出版社のマーケティングをサポートするため、書店の立地や取次会社取引情報などを収集管理し配信しているが、情報収集と保守作業の難しさから、取次との取引がなく、独自の仕入れ方法で商品を揃える独立系書店の情報はごく一部に限られていた。今回、出版社または取次と再販売価格維持契約を締結している新刊書店であれば、誰でも登録可能なシステムに変更した。
 登録した書店は、書店向け新刊刊行物情報ポータルサイト「BooksPRO」への参加が可能になり、ウェブ書店や大手ナショナルチェーンと同じタイミングで新刊の内容・書影・販促情報を取得することが可能になる。書協の書店イベント紹介サイト「ブックイベントナビ」にも参加できる。

2024年度 日書連理事会等日程

 2024年
 ▽4月
 委員会・理事会=休会
 ▽5月
 委員会22日(水)
 理事会23日(木)
 公取協総会23日(木)
 ▽6月
 委員会19日(水)
 理事会20日(木)
 通常総会20日(木)
 ▽7月
 委員会・理事会=休会
 ▽8月
 委員会・理事会=休会
 ▽9月
 委員会18日(水)
 理事会19日(木)
 ▽10月
 委員会16日(水)
 理事会17日(木)
 ▽11月
 委員会・理事会=休会
 ▽12月
 委員会11日(水)
 理事会12日(木)
 年末懇親会11日(水)
 2025年
 ▽1月
 委員会・理事会=休会
 ▽2月
 委員会19日(水)
 理事会20日(木)
 ▽3月
 委員会・理事会=休会

連載「春夏秋冬 本屋です」~亡き兄の思い胸に~/大城洋太朗(沖縄・大城書店 代表取締役社長)

 年度末は業務の締めや人員の移動、入退社など変化の時期で落ち着きません。桜が満開の7年前の4月、2つ上の兄が29歳で亡くなり、私は実家の本屋を手伝うことになりました。
 東京で芸能活動をしていた兄は、30歳までに芽が出なければ本屋を手伝うと決めていたそうです。ところが30歳を目前にして病気が急激に悪化しました。ある寒い夜、兄を看病する父から「兄ちゃんはもうダメかもしれない」と電話がありました。その声はなぜか笑い声交じりで、辛い事実を笑って誤魔化しているように思いました。でも、すぐに泣き声だと気付きました。今まで父の泣き声を聞いたことが無かったので理解できなかったのです。父というものは「父」という別の生命体だと誤認していたのでしょう。その出来事があって父も一人の人間だと知ることができました。その時、本屋を手伝うと決心しました。
 沖縄では寒緋桜という桜が咲きますが、花びらは散りません。東京で兄を見送った日に初めて見た桜の散る姿は、とても綺麗だったことを今も鮮明に覚えています。
 街の本屋は時代遅れで大変な局面に立たされていると有名な経営者が仰っていました。弊社「大城書店」も続けることができるか不安ですが、父が紡ぎ兄の思いが覆うこの本屋を出来る限り地元に根付かせ続けていきたいと思います。

ブックセラーズ&カンパニー 出版社4社と直取引で基本合意/3月以降、順次移行

 紀伊國屋書店、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、日本出版販売(日販)3社の共同出資会社であるブックセラーズ&カンパニー(BS&C、宮城剛高社長)は2月15日、東京・目黒区のビジネスエアポート目黒で報道各社を対象とした事業進捗説明会を行った。
 会の冒頭で宮城社長は、BS&Cの目指すビジョンについて「仕入適正化・売上創出・直仕入取引によって生まれる利益を出版社と書店でシェアし、持続可能な書店ビジネスを構築する」と説明。現時点で主婦の友社、スターツ出版、徳間書店、三笠書房の4社と直取引の基本合意をしており、参画書店との取引については、主婦の友社、徳間書店、三笠書房は3月以降、スターツ出版は4月以降に直仕入に移行していくと発表した。また、他社との商談も進行中であり、決まり次第公表していくと述べた。
 次に日野泰憲取締役が、3月上旬より検証を開始する店舗間在庫ローリングに関して説明した。これは返品減少のため、参画書店間でチェーンの枠を超えて商品を移動させるというもの。今回は次の2タイプについて、店舗作業負荷の確認や返品減少の効果検証などを行う。
 ①フラッグシップ在庫活用型=エリア旗艦店の在庫を同一地区の品切店、未送品店へチェーンの枠を超えて移動させる。紀伊國屋書店1店舗を旗艦店に、積文館書店、TSUTAYA加盟店各2~3店舗を入庫店として福岡・佐賀エリアで実施。②HUB集約・再出荷型=在庫過多店舗の商品を日販物流拠点に戻して専用在庫化。在庫僅少・無しの店舗へ受注促進して、再出荷する。日販物流拠点(王子流通センターを想定)をHUBに、紀伊國屋書店2~3店舗、リブロ、TSUTAYA加盟店各3~5店舗を出庫・入庫店として首都圏で実施。なお、配送はどちらも既存の出版便または宅配便を使う方向で調整している。
 続いて内沢信介取締役が、参画書店員によるジャンル別、地域別の合同企画について報告した。
 ジャンル別については文芸・文庫、児童書、ビジネス、コミックの4つについて、すでに参画書店員・バイヤーがオンラインでキックオフを行っており、まず3月中に良書発掘企画を展開する。その後は夏商戦前に復刊企画、合同販売促進企画へと範囲を拡大していく予定。地域別に関しては九州エリアからスタートしており、紀伊國屋書店、積文館書店、TSUTAYAが参加して1月30日に開催された第1回目の会合では、各チェーンの単品売上情報を共有して仕掛け商品を選出するなど、新たな売上創出の取り組みを検討している。
 宮城社長は総括の中で、「まず合意出版社4社の商品をしっかり売っていくことで売り上げを伸ばし、返品の減少を実現する。参画書店もモチベーションが上がっており、成功させたい」と意気込みを示した

売り場づくりのポイント解説/学参協会・辞典協会 2024年度新学期学参・辞典勉強会

 学習参考書協会と辞典協会は「2024年度新学期学参・辞典勉強会」を2月9日にオンライン配信で開催した。
 開会の辞で、学習参考書協会の志村直人理事長は「学習書や辞典業界の現在と未来を本日の参加者と共有し、業界一丸となって一層の成果に結び付けたい」とあいさつした。
 第1部では「小学参改訂情報~小中学参売り場づくりのポイント、高校学参の新旧課程対応」の演題で、日教販・販売促進部の竹内達哉氏が講演した。
 小学参のポイントについては、①教科書準拠=2024年は教科書改訂があり、準拠商品(ガイド、ドリル、問題集)はすべて入替が必要。3月・4月・5月で年間売上の50%以上を占め、教科では算数と国語、学年では3~6年生の展開に工夫が必要。周辺地域の教科書採択表を売り場に掲示して、お客様が購入しやすいようにする、②厚物参考書=売り上げは3月・4月と7月が山場。算数、理科、社会をメインに展開、③総復習ドリル=3月と12月が売上の山場。低学年から積極的に取り組み、プラス1冊購入に向けて全科ドリルも展開したいと説明した。
 続いて中学参については、①教科書準拠=3月・4月・5月の3ヵ月間で年間売上の54%を占める。教科は英語と数学、学年は1年・2年を中心に展開、②厚物参考書=3月・4月と7月が売り上げのピーク。数学・理科・英語・社会をバランス良く展開、③超基礎レベル=新学期から7月にかけての必須アイテム。教科は英語と数学、学年は1年・2年を中心に展開、④1・2年の復習=3月と7月が売り上げの山場。英語・数学・理科を中心に展開と解説した。
 最後に高学参のポイントについては、①新課程=2024年度から現役生は全員新課程となるので、基本的には併売商品は新課程対応のみをおく。ただし、科目名が変更になった商品は、改訂しないまま販売する意図のものもあり、「現役の生徒に役立つ参考書問題集」という観点で棚を揃える。新旧併売か、新課程のみの販売かを出版社にヒアリングした結果リストを後日ダウンロードできるようにするので活用してほしい、②教科別定番=売れ筋の定番銘柄を切らさないこと。英語は英単語と英文法、数学はⅠAとⅡB、国語は現代文と古文、理科は化学と物理、社会は日本史と世界史が売れ筋の中心、③教科書ガイド=3~5月が大きな山場。商圏の高校の教科書選択を把握し(都道府県教育委員会のHPで確認できる)、新学期に向けて準備する。学参コーナーでPOP掲示による売り場誘導、新学期以降も近隣高校分のみ棚にて常設、年間商品として扱う。また、日教販が数研図書、新興出版社啓林館、文理と共同で作成したコミック調のPR動画はYouTubeで4・8万回再生突破と好評を博しており、活用してほしいとまとめた。
 第2部では群馬大学の柴田博仁教授による講演「紙での読み書きの魅力と学力UPにつなげるエビデンス~最適な道具で学ぼう!~」が行われた。柴田教授は参考書・辞典に関して、①子どもはコンピュータの双方向な機能に過剰適応してしまう。集中してじっくり考えさせたい場面では、現状では紙の利用が望ましい、②書き込み、物語の前後関係の把握、位置記憶の再現には紙のほうが向いているとの私見を述べた。
 第3部では、KaBoSららぽーと新三郷店(埼玉)の笹倉巧至氏、朗月堂書店(山梨)の内藤健太氏、大垣書店イオンモールKYOTO店(京都)の深谷美緒氏の3名による「新学期の棚づくり情報交換座談会」があり、学参担当としての技や特色、普段の陳列で心掛けていることなどについて情報交換した。

読者が選ぶ「ビジネス書グランプリ」/『きみのお金は誰のため』(田内学、東洋経済新報社)が受賞/お金の本質 楽しみながら学べる1冊

 本の要約サービス「flier」を運営するフライヤーとグロービス経営大学院は2月13日、東京・千代田区のメディアドゥ本社で「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」の授賞式を開催し、総合グランプリと各部門賞、各特別賞の受賞作品を発表。『きみのお金は誰のため』(田内学/東洋経済新報社)が総合グランプリとリベラルアーツ部門をダブル受賞した。
 その年に発売されたビジネス書の中から読者が投票し、有益で実用的な本を選出するコンテスト。9回目となる今回は、22年12月~23年11月に刊行された、出版社53社の123冊がエントリーした。
 『きみのお金は誰のため』は、元ゴールドマン・サックス金利トレーダーの田内氏による小説仕立てのマネー論。「いかにお金を増やすか」という資産運用の話ではなく、「お金の本質・経済のしくみ・働くことの意味」について、予備知識なしで楽しみながら平易に学べる1冊になっている。発売前から注目を集め、昨年10月18日の発売から約3ヵ月で累計15万部を突破している。
 田内氏は「多くの読者が周りにも薦めたいと言ってくれた。それが受賞につながったのではないか。中高生でも読みやすい表紙にしたが、親世代や学校の先生方にも読んでもらいたい」と喜びを語った。
 フライヤーの大賀康史社長は「今までの知識や経験で築かれた価値観が揺らぐ現代に生きる個人は、自分ならではの答を出していかなければいけない。今回の受賞作は、自分と向き合う大切な時間を過ごせるものばかり」と講評した。
 なお、全国約1500店舗の書店で受賞作品を展開した店頭フェアを2月14日より順次開催している。
 「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」受賞作品
 ▽総合グランプリ/リベラルアーツ部門賞=『きみのお金は誰のため』(田内学/東洋経済新報社)
 ▽イノベーション部門賞=『温かいテクノロジー』(林要/ライツ社)
 ▽マネジメント部門賞=『任せるコツ』(山本渉/すばる舎)
 ▽政治・経済部門賞=『社会の変え方』(泉房穂/ライツ社)
 ▽自己啓発部門賞=『世界一やさしい「才能」の見つけ方』(八木仁平/KADOKAWA)
 ▽ビジネス実務部門賞=『頭のいい人が話す前に考えていること』(安達裕哉/ダイヤモンド社)
 ▽〈特別賞〉ロングセラー賞=『DIE WITH ZERO』(ビル・パーキンス、児島修(訳)/ダイヤモンド社)
 ▽〈特別賞〉グロービス経営大学院賞=『冒険の書』(孫泰蔵、あけたらしろめ(挿絵)/日経BP)

出版科学研究所調べ/1月期販売額は5・8%減/文芸、学参、ムックが好調

 出版科学研究所調べの1月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比5・8%減となった。内訳は書籍が同3・5%減、雑誌が同9・5%減で、雑誌の内訳は月刊誌が同10・6%減、週刊誌が同4・7%減だった。返品率は書籍が同1・0ポイント増の33・8%、雑誌が同2・2ポイント増の47・8%で、雑誌の内訳は月刊誌が同2・4ポイント増の48・4%、週刊誌が同1・4ポイント増の45・2%。
 書店店頭の売れ行きは書籍が約1%減と、ここ3ヵ月はほぼ前年並みで推移している。文芸は約10%増で4ヵ月連続のプラス。学参は約2%増、ビジネスは約1%減、児童書は約4%減、文庫は約3%減。
 雑誌は定期誌が約6%減、雑誌扱いコミックスが約15%減、ムックは約2%増。『呪術廻戦』(集英社)、『葬送のフリーレン』(小学館)が全巻ランクインしたが、前年同月より販売水準が下がっている。

日販グループホールディングス/新社長に富樫建氏/吉川英作氏は代表取締役会長に

 日販グループホールディングス(日販GHD)は2月19日開催の定例取締役会で、2024年4月1日付の役員・執行役員等の体制を決議し、富樫建専務取締役が代表取締役社長に昇任することを決定した。吉川英作代表取締役社長は代表取締役会長に就任する。露木洋一執行役員は退任し、NICの顧問に就任する。
 また、日本出版販売(日販)は4月1日付の役員人事を決定し、中西淳一常務取締役が専務取締役、伊藤宏治取締役が常務取締役にそれぞれ昇任する。酒井和彦専務取締役は退任し、顧問に就任する。

[新社長略歴]
 富樫 建氏(とがし・たける) 1976年生まれ、神奈川県出身。99年早稲田大学第一文学部卒、日本出版販売入社。2019年日販グループホールディングス取締役、23年専務取締役。主な兼職=日本緑化企画代表取締役社長、ASHIKARI代表取締役社長、カルチュア・エクスペリエンス取締役、日販テクシード取締役会長。

玉山哲氏「お別れの会」4月18日に

 2月14日に死去した玉山哲氏(東山堂代表取締役会長、Iwakyo代表取締役会長、日書連理事、岩手県書店商業組合理事長)のお別れの会が4月18日午後2時~3時半、ホテルメトロポリタン盛岡・ニューウィング4階(岩手県盛岡市盛岡駅前北通2―27、℡019―625―1211)で開かれる。
 葬儀実行委員はトーハン代表取締役社長の近藤敏貴氏と岩手県商工会議所連合会会頭の谷村邦久氏。葬儀委員長は東山堂代表取締役社長、Iwakyo代表取締役社長の玉山達徳氏。喪主は妻の玉山美重子さん。
 供花の申し込みは駒木葬祭(℡019―622―2343)まで。

「上野の森 親子ブックフェスタ」5月4、5日に開催

 BOOK MEETS NEXT「上野の森 親子ブックフェスタ2024」(同運営委員会主催)が5月4、5日の2日間開催される。今回も基本的な運営方法は変えず、利用できるキャッシュレス決済を増やすなどして、スムーズな開催を目指す。屋外来場人数目標は約3万人。

移転=三重県書店商業組合

 3月1日、次の住所に移転した。
 〒514―0035 三重県津市西丸之内24―35 三重県教科書特約供給所内 ℡059(223)4311 FAX059(202)3544

日販調査 店頭売上/1月期は前年比4・3%減/ムックが2ヵ月連続前年超え

 日本出版販売調べの1月期店頭売上は前年比4・3%減だった。ジャンル別では、雑誌は同2・3%減、書籍は同1・3%減、コミックは同12・3%減、開発品は同3・7%増。
 書籍は文芸書、実用書、学参が前年超えとなった。雑誌は、定期誌は低調だったものの、ムックは大河ドラマ関連本や新NISA関連本が牽引し、2010年7~8月以来、13年5ヵ月ぶりに2ヵ月連続の前年超えとなった。開発品も「増子敦貴カレンダー 2024・04・-2025・03」などが好調で、2ヵ月連続で前年超えとなった。コミックは2桁減と大きく下げた。

連載「本屋のあとがき」~「作家クラブ」に加わって~/ときわ書房本店 文芸書・文庫担当 宇田川拓也

 ミステリ好きを公言し、いささか品揃えの偏った売り場を作っていたら、ひょんなことから本格ミステリ作家クラブに加えていただくことになり、早数年が経つ。
 本屋の店員が〝作家クラブ〟に? と首を傾げるのもごもっともだが、いまでは私以外にも書店員の会員が在籍しており、日々ジャンルの魅力発信に努めている。
 この団体では「本格ミステリ大賞」という、会員たちが票を投じ、年間でもっとも優れた推理小説と評論・研究書を選出し、表彰する賞を主催している。一昨年、その候補作を決める選考委員を拝命し、先日無事、任期を終えた。
 続々と刊行される新刊に目を通し、授賞にふさわしいと思う作品を選び出していく。そして、同じく選考委員となった第一線で活躍するミステリ作家や評論家諸氏と意見をぶつけ合い、議論を重ね、小説部門と評論・研究部門の候補作、各五作を決定するのだが、これがそう簡単には決まらない。
 会員たちから集められた票に加え、選考委員各人の本格ミステリ観や思い入れが火花を散らし、一歩も退かぬ攻防が繰り広げられ、たちまち数時間が過ぎていく。
 推すこと、選ぶこと、そのなんと難しいことか。そう痛感するとともに湧き上がるのは、それほどまでにひとを熱くさせる作品とその著者に対する心からの敬意だ。
 ミステリという特異な文芸ジャンルへ寄せるそれぞれの尽きない想いが交錯する、貴重な場に参加できたことは誠に幸運であった。