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平成27年12月1日号
12月16日に出版販売年末懇親会/日書連

日書連は12月16日(水)午後6時から、東京・千代田区の帝国ホテルで出版社、取次、書店、業界関係者を招き出版販売年末懇親会を開催する。この中で、11月20日に発表した「書店金賞」の贈呈式を、受賞作品の出版社や著者を招いて行う。

1等から4等までを決定/「読書週間書店くじ」抽せん会

第42回「読書週間書店くじ」の抽せん会が11月11日に書店会館で開催され、日書連役員、出版社、取次、関係会社の立会いのもと、当せん番号を決めた。
抽せん会は日書連読書推進委員会の西村俊男委員長の司会で進行。開会あいさつで舩坂良雄会長は、「書店の数が年々減少し、売上の減少もあって、書店くじも大変厳しい状況だ。新たな工夫をして、読者に喜ばれる書店くじを目指していきたい」と述べた。
抽せんは、0から9までの番号を記した10個のボールを抽せん箱に入れ、中からボールを1個取り出す方法で実施。日本書籍出版協会・浜崎肇データベースセンター部長、日本雑誌協会・高橋憲治事務局長、日本出版取次協会・松尾靖事務局長、読書推進運動協議会・宮本久事務局長、日本図書普及・平井茂常務取締役が1番から5番までの抽せん箱を担当して1等賞から3等賞までの当せん番号を決定。最後に舩坂会長が4等賞の番号を引いて、全ての番号を決めた。
なお、書店くじの引き換え期間は、12月5日の当せん番号発表から平成28年1月10日まで。

「書店金賞」受賞3点が決定/東邦出版の2点と河出書房新社

日書連は11月20日、「和~日本のこころ」をテーマに出版社19社20点の一押し本を増売し、販売実績上位3点を決定してさらに拡販に取り組む、第2回「書店金賞」の発表式を東京・千代田区の書店会館で開催。東邦出版(2点)、河出書房新社が「書店金賞」を受賞したと発表した。企画参加書店では12月末まで、フェアの継続展開とともに受賞3点のさらなる売り伸ばしを図る。
第2回「書店金賞」を受賞したのは、販売実績順に東邦出版『日本の大和言葉を美しく話す』、河出書房新社『日本人なら身につけたい品性がにじみ出る言葉づかい』、東邦出版『日本の七十二候を楽しむ』。
「書店金賞」は、日書連が推進する書店再生5項目の一環として取り組む増売企画。昨年の第1回「書店金賞」までは「食と健康」をテーマに実用書の増売を実施したが、今年は「和~日本のこころ」をテーマに据え、出版社から幅広いジャンルの本のエントリーを1社2点以内で募集。全国の書店や日書連関係者がノミネート19社20作品を投票で選出し、Aセット「文化・伝統を知る」(10点各3冊・計30冊)、Bセット「暮らしを楽しむ」(同)、Cセット(A+Bセット)を用意して参加書店を募集、345書店378セットを受注した。
販売期間は9月から12月末までとし、11月15日時点の全国POSデータの実売数を基に上位3銘柄を「書店金賞」に決定。さらに1ヵ月の増売を実施する方式は前回と同様で、4ヵ月間の販売実績に応じて報奨金が支払われる。
発表式では、書店再生委員会の本間守世委員長が「書店金賞」実施について経過報告と今後のスケジュールを説明。金賞受賞銘柄を記した垂れ幕の披露に合わせ受賞3点を発表した。
受賞した東邦出版の前田久典執行役員は「初参加にもかかわらず2商品がノミネートされ、さらに書店金賞をいただいて大変驚いている。年末年始に向けてかなり動く商品なので、今後も促進を続けていきたい」、河出書房新社営業第一部第二課の田丸慶課長は「(この商品は)ある書店でこつこつやっていただいていたのを、うちの担当が見つけて仕掛けだしたのが発端。ヒントを引っ張って大きくやればここまでできるんだという証明になったと思う」と喜びを語った。
日書連の舩坂良雄会長は「この増売企画は書店から声を発し、いろいろな企画を出していこうと意図して始めた。背景には書店の厳しい経営状況がある。何とかこれを良くしたいという考えが第2回の書店金賞に込められている。今年も残すところ僅かとなったが、年内いっぱい頑張っていきたい」とあいさつした。

催し

◇「よむよむ・わくわく広場in文京区」
12月6日(日)午前10時~午後4時、東京・文京区の文京シビックホール小ホールで開催。同実行委員会主催。文京区、東京都書店商業組合文京支部、南天堂書房、文字・活字文化推進機構内「絵本・日本プロジェクト」共催。
幼児・小学校低学年と保護者が対象。参加無料。地元書店による地域活性化イベントとして、近隣の子どもたちに絵本や様々な体験を通して活字文化に親しんでもらうことが目的。
当日は絵本作家によるおはなし会・講演会をはじめ伝統文化体験(和綴じ本作り、和太鼓、あめ細工等)、人気キャラクターとのふれあいなど、様々な催しを予定している。また、「深谷圭介先生辞書引き学習特別授業」を午後3時半~5時に行う。
問い合わせは南天堂書房までメールで。nantendo@image.ocn.ne.jp


こどもの本を展示即売/「絵本ワールド」新潟会場で/新潟組合

「絵本ワールドinにいがた」が11月15日、新潟市の朱鷺メッセで開かれた。新潟日報社主催、子どもの読書推進会議共催、新潟県書店商業組合など協力。
柏崎市在住の絵本作家、かんべあやこ氏の講演会「絵本と過ごす親子の時間」、長岡市生まれの絵本作家、松岡達英氏によるワークショップ「親子で作る流木を使ったウェルカムボード」など様々な催しが行われ、大勢の親子が楽しんだ。両氏のサイン会も行われた。
新潟県書店商業組合は「子どもの本大展示即売会」を行った。本を購入した人にがらぽん抽選会に参加してもらい、当選者に図書カードや出版社提供のキャラクターグッズをプレゼントした。レジ、包装、がらぽん、棚の整理、お客様への応対と多忙な1日になったが、たくさんの組合員の協力もあり、売上は65万円と目標の50万円を大きく上回った。
同時に深谷圭介氏の講演会「辞書引き学習会」を開催し、280名の親子が参加した。調べた言葉に付箋を付けて自学自習の習慣をつけるという深谷氏独自の実習法だが、子どもたちが脇目も振らず、考え考え、辞書に付箋を貼っている姿は、とても頼もしく見えた。(西村俊男理事長)

神保町ブックフェスティバル/2日間で売上5000万円

第25回神保町ブックフェスティバルが10月31日、11月1日の2日間、東京都千代田区神田神保町のすずらん通り、さくら通り、神保町三井ビルディング公開空地の各会場で開かれ、多くの本好きで賑わった。同実行委員会主催、東京都書店商業組合千代田支部など共催、出版文化産業振興財団など協賛、東京都書店商業組合など後援。
汚損本や自由価格本を販売する「本の得々市」や児童書のワゴンセール、ニューオーリンズジャズ演奏、朗読劇、作家の講演会、チャリティーオークションなど様々な催しが行われた。東京都書店商業組合青年部もワゴン2台を出し、直木賞・本屋大賞の受賞作や妖怪ウォッチ関係の人気本などを30%引きで販売、たくさんの人が集まった。
また、今年は「こどもの本ひろば」を集英社前広場から神保町三井ビルディング公開空地に移し、絵本・児童書のワゴンセールをはじめ紙すき体験、シールラリー、おはなし会などを実施。親子連れを楽しませた。
10月31日午前10時半から行われたオープニングセレモニーでは、大橋信夫実行委員長(東京堂)の開会宣言の後、東京都書店商業組合の舩坂良雄理事長ら関係者によるテープカットとくす玉割りが行われ、明治大学応援団・吹奏楽部・チアリーディング部のパレードで華々しく開幕した。
期間中の売上は、初日2800万円、2日目2200万円、合計5000万円となり、2日間開催では過去最高を記録した。このうち飲食を除く本の売上は4200万円だった。

複本、指定管理者制度など討議/全国図書館大会

日本図書館協会は10月15日、16日の両日、東京・渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで第101回「全国図書館大会」東京大会を開催した。大会テーマは「図書館は地域の広場生きる力」。15日は開会式と全体会、16日は22のテーマの分科会を行った。
初日に基調報告した森茜理事長は、指定管理者制度の導入が増加していることに触れ、「TSUTAYAが運営する図書館で、市民の教育・学習の観点から首をかしげる実態が明らかになっている。地域の在り方を真剣に考え、市民の考えが反映される機運を作ることが必要」と話した。
「図書館とまちづくり」と題したシンポジウムでは、慶應義塾大学文学部教授の糸賀雅児氏をコーディネーターに、宇美町の木原忠町長、田原市教育委員会教育部次長兼中央図書館長の豊田高広氏、神奈川県立図書館資料部図書課長の石原眞理氏が討論した。
糸賀氏が民間の力を活用した図書館のあり方について意見を求めると、豊田氏は「指定管理者制度で成果をあげているケースも多いが、まちづくりの観点からは直営がやりやすい。指定管理者は専門企業が一定の条件の下で力を発揮するが、地域をつなぐ図書館を指定管理者に求めるのは困難。民間企業に丸投げするのではなく、行政・自治体にプロデューサー的な役割が求められる」、石原氏は「賑わいを追求するだけでなく、図書館の基本は押さえてほしい。ど素人だからと片づけず、選書、配架などを勉強してから参入してほしい」と述べた。
2日目に行われた分科会「出版と図書館」では、はじめにみすず書房の持谷寿夫社長が問題提起を行った後、新潮社の佐藤隆信社長、偕成社の今村正樹社長、東京大学出版会の黒田拓也専務理事、新星出版社の富永靖弘社長が、文芸書、児童書、学術専門書、実用書の各分野の出版社を代表して、それぞれの立場から意見を述べた。
新潮社の佐藤社長は「図書館における複本の貸し出しが文芸書の販売に影響を与えているという声が、出版社だけでなく書店や著者からも出始めた」とデータを示しながら説明。「複本がストレートに良い悪いとは言えないが、売上を毀損しているのではないか。図書館で読書の習慣をつけた読者が、書店で本を買うことによって、豊かな出版文化が支えられている。図書館が便利過ぎると、根本にある出版を壊しかねない。どれぐらいのサービスがいいのか考えて運営していただきたい」と求めた。
偕成社の今村社長は「児童書は買い替え需要があるので、複本問題は今まで意識してこなかった。貸出冊数至上主義には懸念を持っている。数を競うことは子どもにとってハッピーな読み方ではないので見直してほしい。市民と対話しながら明確な目的を持つ図書館を次世代に渡したい」と話した。
東京大学出版会の黒田専務理事は「公共図書館は利用者が本を深く読み込む力をつけるための活動に力を入れてほしい。人気本を上位から揃えるのが役割ではない。出版界としても司書の育成とステータス向上に取り組みたい」と述べた。
新星出版社の富永社長は「実用書は図書館の書誌情報と親和性が低く、図書館に行っても探しづらい。実用書は利用されてこそ意義がある。図書館で見て書店で買ってもらうという見本展示場の役割を果たしたり、実用書から専門書に進むきっかけを作るなど、使いやすい図書館を作ってほしい」と要望した。

前年同期比で92・30%/2015年上期ABCレポート

日本ABC協会は2015年上半期(1月~6月)雑誌発行社レポートを発表した。今回掲載したのは38社156誌。各雑誌部数の前年同期比の平均(既存誌ベース)は、週刊誌91・59%、月刊誌92・49%、合計92・30%となった。
総合週刊誌は、『週刊文春』が2014年下期から2万1千部減少したものの41万6千部で部数トップをキープ。2位の『週刊新潮』は1万1千部減の31万3千部、3位の『週刊現代』は1万6千部減の30万2千部でともに部数を減らした。新聞社系では、『週刊朝日』は9万5千部と2千部減少したが、『サンデー毎日』は4千部増の5万7千部と復調した。
ビジネス誌は、『週刊ダイヤモンド』が8万7千部で前期より若干増、『週刊東洋経済』は1千部増の6万5千部だった。『プレジデント』は1万1千部増の18万6千部と盛り返した。
女性週刊誌は、『女性セブン』が21万7千部で1万1千部減、『女性自身』が20万8千部、『週刊女性』が11万3千部でともに1万部減と、いずれも振るわなかった。
月刊女性誌は、『with』が12万部と、5万3千部の大幅減。『ESSE』は4万8千部減の25万6千部と30万の大台を割り込んだ。

シンポジウム「軽減税率は子どもたちへの贈り物である」

10月20日、東京・千代田区の衆議院第1議員会館で開かれたシンポジウム「新聞・出版文化を守り、民主社会の未来を語る会――軽減税率は子どもたちへの贈り物である――」(主催=文字・活字文化推進機構、日本新聞協会、日本書籍出版協会、日本雑誌協会)で、浅田次郎氏(作家)、郭洋春氏(立教大学経済学部教授)、姜尚中氏(東京大学名誉教授)、柳田邦男氏(作家)が、なぜ新聞・出版文化に軽減税率適用が必要か、それぞれ考えを語った。各氏の発言要旨を紹介する。

長谷部与党の軽減税率の議論の状況を確認したい。17年4月の10%引き上げと同時に軽減税率を導入するという方向性が官邸のリーダーシップで固まった。対象品目は、多いと負担軽減にはなるが税収が減るので、自民党と財務省は少なくしたい。新聞、出版物は食料品とは別の社会政策的な配慮という考え方で対象にするかどうかを議論していく。12月中旬に税制改正大綱が決まるので、11月から12月にかけて大詰めの議論になる。
浅田6月の院内集会で、「私は今まで本を食べて生きてきた」と気障なことを言ったが、後から思い返すと実感だ。若い頃に神保町の古書店に行った時、千円しか持っていなくて、千円の本を買うか昼食か、ひもじい思いをしても間違いなく本を選んだ。小説家を志していたからではなく、本好きな人、知を求める人はそういうものだ。
自分の本が刊行される時、値付けにはとても拘る。出版社に無理を言うこともある。1600円の単行本なら1500円にならないか、500円の文庫本なら490円にならないかと言う。100円、10円の違いで何かを買い逃したのではないかという恐怖感が蘇るのだ。それが人生の決定的な1冊だったかもしれない。だから、どうしても値付けには拘るし、書店に行って本を買う時、いまだに雑誌1冊買うのでも定価を確認する。習い性で見てしまう。若者は皆、価格で取捨選択するのが現実。読書する人たちのことを考えると、消費税率は大きいというのが実感だ。
小説は食べ物を作るような気持ちで書く。いい小説は、満腹感があり、栄養がある。読者が満足するか、栄養になるか、おいしいかを考える。安ければなおいい。価格も重要な本の要素だ。
読書は消費の水準によって差が出てはならない。貧乏な若者に高いから買えないというハンディキャップを与えてはならない。税率云々ではなく、社会がそういう努力をしなければならない。知の公平さを問うべきだ。
消費税そのものは公平な税制だ。公平だからこそ知の公平さまで踏み込んで考え、貧富に関わらず知を吸収するチャンスを若者たちに平等に与えてほしい。本と新聞の値段を少しでも安くすることが一番具体的な方法だ。
郭EU28ヵ国の軽減税率対象品目を見ると、その国の意図、メッセージがはっきりと伝わってくる。スロバキアとブルガリアを除く26ヵ国では、新聞については元々非課税の国もあるが軽減税率を適用している。食料品は23ヵ国だから、食料品以上に新聞に軽減税率を適用している。新聞による国民への情報提供が公共の利益に役立つという考えがあるからだ。軽減税率または非課税という思い切った政策をとることで、多くの人たちに平等に情報を提供する。そこから様々なビジネス、文化活動、社会活動などに取り組む機会を平等に与えたいという公益性のメッセージが込められている。
文化の育成・振興、産業保護、社会福祉の充実、地方創生の観点から軽減税率を適用している国もある。文化の育成・振興の観点からは、イギリスでは菓子は贅沢品として標準税率だが、アフタヌーンティーに欠かせないビスケットは軽減税率適用対象になっている。午後のひとときイギリスが長く培ってきた文化を味わってほしいというメッセージがある。また、産業保護政策の観点では、クリーニングが多くの国で軽減税率適用対象になっている。クリーニングを標準課税にすると、多くの人たちが家庭で洗濯をするようになり、クリーニング店が潰れてしまうという考えがある。社会福祉の観点からは、アイルランドでは子供服がゼロ税率になっている。若い世代に安心して子どもを産み育ててもらいたいというのが、アイルランドのスタンスだ。地方創生では、スペインが花や種子、野菜の苗に軽減税率を適用している。スペイン南部は花や野菜の苗の産地。最初は標準税率だったが、産業へのダメージが大きかった。そこで軽減税率を適用した結果、産業が蘇った。
日本でも軽減税率を導入して文化の育成、知的創造力を強くすることで、さらに新たな産業創造、知的財産の保護育成につなげる観点が必要だ。
姜戦後、東大の初代総長だった南原繁が「文化国家でいこう」と言った。どんな飢餓状態でも学生たちは西田幾多郎の『善の研究』を読みたい一心で、連日連夜、空きっ腹で岩波書店を取り巻いた。こういうことがあって初めて戦後日本は奇跡的な復興を成し遂げた。出版文化、映像文化の分厚い蓄積があったから、多くのノーベル賞受賞者が生まれた。
これだけの活字・映像文化を持ち、平和指向でやってきたことで、スポーツ、文化、文学、音楽など様々な分野で個性が羽ばたいた。戦後70年、日本は民主主義があって大きな蓄積ができた。これを自ら削り落としていいのか。
新聞・出版文化は単なる税制の算術の問題ではない。官僚のさじ加減ではなく、国民の意思に基づいて、政治家がプライオリティをつけることが必要だ。OECDの中で日本は教育予算の少なさで韓国とビリを争っている。そういう中でもこれだけのものが生まれ得るのは、膨大な出版文化、新聞販売網など活字文化があるからだ。こういうものがなくなると地方から疲弊する。日本が持つナショナルプライド、ナショナルアイデンティティもどんどん希釈される。
軽減税率適用は、お目こぼしをお願いするのではなく、膨大な蓄積を次世代、次々世代に確実に渡すという、子どもたちに対する投資。食料品の次というよりは、最初から聖域として手を付けないようにすべきだ。日比谷公会堂や日比谷野音に国民が集まり、「日本の文化が廃れる。子どもたちを大切にする国なのか」という主張を訴えるような、国民的ムーブメントを起こしていただきたい。
柳田ノンフィクション分野で社会問題の執筆活動をしているが、最近は仕事の半分を子どもをどう育てるかの問題に焦点を合わせ、読書活動や絵本活動について年間40カ所で講演している。子どもたちがネット社会、核家族化、貧困の中でどういう状況に置かれているかを見るにつけ、子どもの人間形成に絵本の読み聞かせが重要だと思う。家族が食事中に会話もなく、それぞれスマホを楽しんでいる。家族の崩壊が起こっている。子どもの人間形成にはスキンシップと肉声の中での感性、言語力の発達が必要。絵本の読み聞かせをひたむきにやっている家庭の子どもの素晴らしさは、実例でたくさん見てきた。
3分の1の家庭は絵本を買わず、読み聞かせもしない。そういう中で子どもがネグレクトされ、人間形成が非常に歪んできている。子どものいる家庭や幼稚園、保育園、学校で、どれぐらい本を伸び伸びと買えるかは大きな問題だ。講演する時、家庭の皆さんに「月に2千円の絵本を買って、子どもと一緒に読みましょう」と言っている。その1冊を選ぶにあたっては、図書館や絵本館から借りて、これはという本を決めたら必ず家庭で持って、永遠の財産にするような気持ちで子どもと親が共有する。スキンシップと肉声の中で家庭に文化的なものが生まれ、子どもの素晴らしい才能が発揮される。
ある家庭では、子どもが1歳の時から読み聞かせする時はテレビを消し、携帯やパソコンもやめて子どもと向き合った結果、アメリカ留学してから文脈理解力や言語力の基礎があるゆえに、英語を教わらなくてもクラスでトップクラスになり、地元新聞主催の小説賞ジュニア部門でグランプリを獲るぐらいの英語力がついた。いま小学校から英語を教えろと盛んに言われているが、根本から考え直す必要がある。
子どもの貧困が大きな問題になっている。給食費を払えない家庭もある。そういう状況の中で月2千円の絵本を買うため家計をやり繰りすると考えた時、10%の消費税は負担感を強める。本に手を出さない家庭が増える可能性がある。
家読(うちどく)運動の旗振り役をやっているが、家読をやるためには家庭に本が必要。本が買いにくくなることは子どもの人間形成を危うくする。税制は日本人の未来、日本国の未来に関わる問題だ。出版物の消費税率は5%以下にすることを断固求める。
長谷部皆さんの話を聞くと、軽減税率どころかゼロ税率にすべきというコンセンサスができそうだ。文化あるいは教育的観点から指摘をいただいたが、民主主義の基盤という観点から新聞協会の取り組みを紹介したい。
民主主義の基盤は情報の公平性と多様な言論の存在。戦後日本は分厚い出版・新聞文化で成立してきた。新聞は全国に戸別宅配網があり、全国津々浦々に毎朝新聞を届けている。先進国でも異例に高い世帯普及率が民主主義を支えてきた。消費税が上がって新聞の購読料が上がると、低所得の世帯は購読をやめる。部数の少ない販売店、特に地方の販売店は経営が厳しくなる。廃業すると、その地域は新聞を配ることが難しくなり、低所得者、地方居住者は新聞の情報を取りにくくなる。部数の少ない新聞社の経営も立ち行かなくなり、その地域で1紙減ると言論の多様性が細っていく。消費税が軽減税率なしで上がると民主主義の基盤が崩壊するのではないかと懸念している。
新聞協会は1980年代に売上税構想が浮上した時から新聞・出版への非課税を要求し、法案の中に書いてあったが、成立しなかった。それ以来運動を続けてきて、今まさに正念場を迎えることになった。
郭フランスの大学教授が「ルーブル美術館こそ世界の文化の心臓なのだ」と言うのを聞いた。フランスは自分たちの文化に誇りと自信を持っている。文化こそが国や社会を発展させてきたのだから、多くの人たちに文化的な価値に幅広く接する機会を設けなければいけないと考えている。新聞は公共益であり、誰もがいつでも読める状態とし、安心して安く買えることが大切という観点から軽減税率を適用している。
あらゆる情報を発信する新聞を標準税率にして活字離れが進めば、世の中で何が起きているのか、自分の国、地域で何が起きているのか分からなくなり、国や世界に対する関心も薄れてしまう。
姜EU諸国では出版・新聞に軽減税率を適用するのは当たり前のことだ。ドイツは戦後、人々が多様な意見を知る仕組みとして文字文化を大切にしている。新聞も小さな町ごとにたくさんあり、自分たちの地域社会で起きていることに非常に詳しい。身の回りで起きていることを知らなければ大きな話も分からない。
日本の新聞・出版は売上や競争力から見れば衰退産業だから淘汰されるのは当たり前と考えるならば、日本の文化は再生できなくなる。他の産業と同じ基準ではなく、質的に違う基準で新聞・出版の税は考えねばならない。
長谷部フランスや北欧では軽減税率だけでなく、財政による補助も行っている。スウェーデンは同じ町に新聞が3紙あると、多様性を守るために一番弱い新聞を補助する。
柳田子どもたちが本に触れる場は学校図書館、公共図書館、絵本館、コミュニティセンターなど色々ある。そこに本を揃えるには予算が必要となるが、全国的に図書整備費は非常に厳しい。人口の少ない自治体の図書館は非常に寂れた状況になっているところもある。一方、東京の荒川区は、読書活動に熱心な区長の判断で、各校長の裁量で自由な発想ができる予算を独自に用意している。学校の図書館は子どもたちが入りたくなるような魅力に溢れている。
地方と都会の落差の大きさには財源の問題が絡んでいるが、財源が厳しいところにさらに税率が上がると、地方の疲弊した自治体の図書整備はますます思うようにいかなくなる。
子どもの人間形成を危うくしている要素は2つある。1つは核家族化。両親が働くことで親と子がスキンシップの時間を持てなくなっている。2つ目はスマホ依存。ネット社会、デジタル社会の中で活字文化から離れてしまっている。学生はスマホで必要な情報やニュースを見て、専門分野の勉強は仕方なくするけれど、幅広い教養を身につけるための読書をする機会がほとんどない。
長谷部大企業でも新聞を読んでいない新入社員がたくさんいて、新聞の読み方の新人研修を頼まれることがある。マスコミ業界志望者が集まった教室で12人のうち2人しか新聞を読んでいなかった。将来が不安になった。
浅田ネット化された知識は近視眼的で表層的だ。活字は全体的、巨視的、根本的に捉える。それが教養主義というものだ。
日本の近代の歴史を考える時、明治維新を成功させたのは寺子屋教育が行き届いていた結果の識字率だ。明治時代の教育も寺子屋教育以来の知的インフラをそのまま継承して小学校からの教育をきちんとやった。こういう歴史の中にいて、ネット化社会だからと言って簡単に教養主義の伝統を否定していいものか、非常に考えるところだ。
私たちは明治以来、教養主義の伝統の中で文化を育み、今日このようにある。そういう覚悟をネット社会の中で持っていなければいけない。活字文化推進、読書率向上という目的のためにもゼロ税率でいいのではないか。3%の時に大騒ぎすべきだったが、今からでも遅くない。ゼロ税率にする論理はいくらでもある。日本の値打ちは経済面、科学技術面だけと言われるが、それも教養主義があったればこそということをよく考えてほしい。軽減税率は、日本が文化国家として認知されるかどうかの試金石になる。
郭欧州は日本以上にネットが盛んだが、日本と違うのは、彼らは一定の知識や情報をベースに自分で調べ、文章を書き、メッセージを発信しようとしている。ネットを通して次の社会や文化を作っていきたいという積極的な取り組みが多く見られる。ネットを通したビジネスや価値観が生まれている。日本の場合は、コピペして同じものを作ったり、情報を受動的に受け止めてそのまま発信しているだけという印象だ。
姜情報学環にいたときの同僚でネットに詳しい研究者によると、日本の特徴はスマホにかなり特化したことだという。パソコンを通じてネットと繋がっている人は読書時間が比較的長い。一方、スマホからネットに繋がっている人は新聞を含めて読書時間が極めて短い。スマホの普及と読書量の少なさには因果関係があることが分かった。
スマホやiPadを使って分かったのは身体感覚が希薄であること。紙媒体が持つ「物」としての感触がないので、コンテクストが読めない。コンテクストを読めないままでものを知っていくようになると、教養主義とは反対の方向、断片化に行く。断片をコピペしてアセンブリーしたものを文章だと言っているが、デジタルでは文章能力は蓄積されない。広い意味で人文的な知識が必要だ。ネットとどう共存していくか、相当自覚的に考えなければならない。
長谷部昨年、消費税が5%から8%に上がった。新聞は14年に4500万部だったが、1年で160万部減った。出版販売金額は1年で4・5%減、統計を取り始めてから最大の落ち込みとなった。書店も減り続けている。書店がない自治体は332市町村で、全国の自治体の5分の1にのぼる。税金が上がるというのはこういうことだ。
柳田国が元気になり、生き生きとした故郷や地域とするため、子どもが生き生きとする環境を大人が作っていかねばならない。地方では小中学校の合併が進んで、子どもたちは1時間以上かけてバスで拾われ、帰りはまたばらまかれる。友達が連れ添って道を歩き、草花や昆虫と遊ぶ光景は、もうまったく見られない。疲れ切ってバスの中で眠っている。そういう中で、本に接する機会をますます奪う制度を国が作っていくことに慄然たる思いだ。税制の問題は日本の活力や子どもたちの未来、国の未来に関わっていることを政府は認識してほしい。
姜国民的ムーブメントにしなければいけない。税制改正大綱まで時間がない。もっと大きな会場で気勢を上げたほうがいい。
郭活字文化に軽減税率を適用しないと、日本は他の国との競争力を失う可能性がある。今の議論は、軽減税率の範囲を広げると税収が減るからどこまで抑えるか、税収をどれだけ取れるかに終始している。増税時に痛税感を受ける国民に対してどれほどのメッセージを出すかが大事な時に、面倒くさいとか複雑だということでは、税金を納める国民は納得しない。すべての国民が納得する明確なメッセージを軽減税率の中に込めることが必要だ。
浅田10%になると、小説の場合は単行本で150円から200円、文庫本で50円から100円が上乗せされる。これを大人の感覚で考えないでほしい。アルバイト代で本を買っている学生やお小遣いをもらって絵本を買っている子どもにとって、この金額は大変なダメージになる。いきなりゼロとは言わないが、将来はゼロ税率を目指していただきたい。
長谷部税法の世界では、どんな商品やサービスでも原則として同じように課税する。簡素、中立、公平という原則にすべて沿わなければならないという教条主義的、原理主義的な考えがある。しかし、新聞、出版物には再販制度がある。第三種郵便物制度もある。国が公的な役割を認めているからだ。自治体が税金で図書館を作って、本、雑誌、新聞を保管、貸し出している。
税法の世界では新聞、出版物は他の商品と同じと考えられるが、欧州を見るまでもなく、元々、日本は新聞、出版物の公共性に着目して他の商品とは別に扱うという制度的枠組みと基盤がある。税制もそれに沿ってやるのが自然だ。

軽減税率求めるチラシ配布/衆参両院の全国会議員に/書協

日本書籍出版協会は11月12日、東京・千代田区の衆参両院議員会館に全国会議員を訪問し、出版物に軽減税率適用を求めるチラシ(写真)を配布した。
日書連、書協、雑協、取協の出版4団体は一丸となって署名活動や国会議員への陳情など出版物に軽減税率適用を求める活動を展開しているが、読者にも理解を求めるため、雑協、書協加盟出版社の9月以降発行の雑誌やウェブ等に意見広告を掲載。さらに、11月から全国の書店店頭にチラシを設置している。
チラシの表面には「書店を守ろう!子どもたちの未来のために!『本と雑誌』は『軽減税率』が世界の常識です」と打ち出し、欧州諸国では自国文化発展のため出版物に広く軽減税率を適用している事例をグラフで紹介。さらに、日本では新刊書店がない自治体数が全国332市町村にのぼることをデータで示し、これ以上書店が減ることで、子どもたちが全国どこでも等しく本に触れられる環境が破壊されることを危惧すると訴えている。
裏面には「私たちは、2017年4月に予定されている消費税率10%への引き上げに際し、出版文化に軽減税率を適用することを求めます」と題する提言の全文を掲載。末尾に「出版文化に軽減税率を求める有識者会議」メンバーの日本ペンクラブ・浅田次郎会長らの名前を列記している。
当日はチラシのほか、10月20日に衆議院第一議員会館で開催されたシンポジウム「新聞・出版文化を守り、民主社会の未来を語る会――軽減税率は子どもたちへの贈り物である――」の内容をまとめたリーフレットと、同シンポジウムにおける書協・相賀昌宏理事長の報告原稿を合わせて配布した。

第9回高橋松之助記念賞/福米東小など3校に朝の読書大賞

読書推進と文字・活字文化振興に貢献し、業績をあげた学校、地方自治体、団体、個人を顕彰する第9回高橋松之助記念「朝の読書大賞」「文字・活字文化推進大賞」(高橋松之助記念顕彰財団主催)の表彰式が10月29日に東京・千代田区のクラブ関東で行われた。
今回朝の読書大賞を受賞したのは、米子市立福米東小学校(鳥取県米子市)、清教学園中・高等学校(大阪府河内長野市)、香川県立高松東高等学校(香川県高松市)。文字・活字文化推進大賞は、北海道中川郡幕別町の幕別町図書館が受賞した。
贈呈式は、高橋松之助記念顕彰財団・肥田美代子理事(文字・活字文化推進機構理事長)のあいさつに続き、衆議院議員で活字文化議員連盟会長・図書館議員連盟会長の細田博之氏が祝辞。選考顧問で上智大学名誉教授の植田康夫氏が選考経過を報告した後、選考顧問で作家の井出孫六氏から受賞者に表彰状と副賞が贈られた。
受賞者あいさつで、福米東小学校の浦林実校長は「朝の読書によって、どのクラスも落ち着いて学習に取り組める学校になっている。落ち着きや読書量の豊富さは学習面にも好影響を与えていて、全国学力・学習状況調査等では常に好結果を生んでいる。この受賞を励みに、これまでの取り組みを継続するのはもとより、新たなことにもチャレンジして、より良い朝の読書を目指していきたい」と述べた。
また、革新的なシステム改修や地元書店・福祉施設と連携した運営など、地域住民のための新たな図書館のあり方を示したことが評価された幕別町図書館について、幕別町教育委員会の山岸伸雄教育部長が受賞のあいさつ。山岸教育部長は、地元書店からの図書購入や、福祉施設と協力した装丁作業など幕別町図書館の取り組みを説明し、「今の思いをしっかりと胸に刻み、道をそれずに頑張って行けという叱咤激励の意味も込めて受賞に至ったと考えている。それを忘れずに今後も図書館職員とともに教育行政を進めていきたい」と語った。

「出版販売の基礎知識」最新版を発売/トーハン

トーハンは、書店実務マニュアル「出版販売の基礎知識第19版」を10月27日に発売した。A5判210ページ、頒価1千円(税別)。
複雑でイメージしにくい出版物の流通・販売システムや、商慣習、書店実務、商品知識などを図解でわかりやすく解説。ポイントを押さえた具体的な内容で、書店スタッフや出版業界に従事する人の基本的知識の習得、確認に活用できる。問合せはトーハン・コンサルティング(℡03―3266―9623)まで。

著者、編集者がプレゼン/報道関係向けに企画発表会/小学館

小学館は10月21日、東京・千代田区の学士会館で「第6回新企画発表会」を開催。秋から来年初頭にかけて予定している出版企画について、担当編集者や著者がプレゼンテーションを行った。
冒頭で相賀昌宏社長は「企画書は大変盛りだくさんで、私としてはどれもぜひお力をいただきたいという気持ちだ。今日は書かれた先生や直接担当した編集者が説明するので、その中から心に響いた言葉、心に残った説明をできる限り拾い上げて、多くの読者の方々に届けていただきたい」とあいさつ。続いて各担当者が発表を行った。
第四コミック局が発表した『バイウイークリーブック名探偵コナンDVDコレクション』は、テレビと劇場版アニメ20周年を来年迎えての記念企画。テレビアニメから特選した数話と特典映像を加えたDVDとガイドブックをセットにした。16年3月23日に1・2号同時発売し、以降は月2回で全12号を刊行する。
出版局が発表した文芸作品では著者の桜木紫乃氏、鈴木光司氏が登壇。桜木氏の直木賞受賞後初長編となる新刊『霧(ウラル)』では、桜木版「極道の妻たち」「宋家の三姉妹」という同書について桜木氏が「男は犬死、女は強く生きていくという極道の世界を、北海道を舞台に書けたらいいなと思った」と話した。また、鈴木氏は新刊『ブルーアウト』を紹介して、「僕の小説ではテーマとして、主人公が危機的状況をいかに克服して生存するかを繰り返し語っているが、『ブルーアウト』はその中でも代表作になると思う。全編海を舞台にした、手に汗握る海洋冒険小説だ」と語った。
この他、以下の企画説明が行われた。
▽第二コミック局=マンガアプリ「マンガワン」▽ライフスタイル誌編集局=『ビーパル増刊b*p』▽デジタル事業局=『立原正秋電子全集』▽児童・学習編集局=『ぴっかぴかえほん』『キッズペディア世界遺産』▽ポスト・セブン編集局=『下町ロケット2ガウディ計画』▽出版局=『わが心のジェニファー』『ごてやん私を支えた母の教え』『ロマンシエ』『池上彰の世界の見方15歳に語る現代世界の最前線』▽児童・学習編集局、第三コミック局、広告局=『This!』▽女性誌編集局=『世界の320万人が〝いいね!〟した「アメージング京都」』

生活実用書/注目的新刊

1971年7月、銀座三越にマクドナルド1号店がオープンした頃から、日本の食は欧米化の一途をたどる。反対に、現在では欧米の方が日本食のブームになって久しい。
辰巳浜子/辰巳芳子著『新版娘につたえる私の味一月~五月』(文春新書1048 1000円)は、そんな洋風化した日本の次世代に伝えたい、和の家庭料理である。
母の浜子氏は明治生まれの料理研究家。すでに逝去されているが、息女の芳子氏も料理研究家。母娘でさらにまた、伝承される日本の心である。一月はお正月のお重詰め。一の重から五の重まで26種。黒豆はカップ2杯に白ザラメ同量~3杯、塩小さじ4分の1杯または醤油大さじ1杯。たっぷりした水に一晩つけ、翌朝充分にふくらんだものをつけ汁のまま火にかける。煮立ったら火を弱めてことこと煮続け、柔らかくなったら火を止めてさめるまでむらす。さめたら豆と煮汁を別にし、カップ1杯の煮汁と白ザラメを合わせ、豆を入れて30分位弱火で煮て出来上がりである。雑煮、七草粥、柚子味噌、鱈昆布〆など、一月だけでもごちそうがいっぱいである。
母は「この本が、ほんとうのひらめきのある人を育てますように」と結び、娘は「ただ心をこめさえすれば、この位のことは出来るということをお目にかけたにすぎません」と語る初版の前書き。温かい伝統料理のレシピだ。
車浮代著『江戸の食卓に学ぶ江戸庶民の〝美味しすぎる〟知恵』(ワニブックスPLUS新書140 900円)は時代小説家が語る日本人の食の原点。江戸料理の特徴は冷蔵庫などないため旬の食材を使う。調理に時間をかけず、油をほとんど使わないうえ、肉もあまり食べない。つまり、ヘルシーで経済的。江戸中期には屋台文化も成熟し、言わば現代のファストフードだが、蕎麦、鰻、天麩羅、寿司の順に発展し、江戸前四天王の言葉もあった。江戸料理の再現レシピも、畳鰯の吸い物、蜆肉飯、山かけ豆腐、深川鍋、玉子いり出しなど25種が紹介される。巻末にはルーツや由来を解説した江戸の食材事典が付く。鰹は縄文前期の古きからすでに食べられていたという。
親から子へ先人から連綿と伝承された日本の食文化を見過ごしてはならないだろう。
(遊友出版・斎藤一郎)

第52回文藝賞に畠山、山下両氏/河出書房新社

河出書房新社が主催する第52回文藝賞は、畠山丑雄氏『地の底の記憶』、山下紘加氏『ドール』に決まり、10月29日に東京・千代田区の山の上ホテルで披露の会が行われた。
式典では、受賞者に賞状と正副賞が贈られた後、藤沢周、保坂和志、星野智幸、山田詠美の各選考委員が選評。受賞者あいさつで畠山氏は、下宿で執筆した当時を振り返って、「あの頃の私は、架空の土地の地の底へ続く深い坑道を手探りで進んでいるところだった。そして今私は再び新たな坑道の奥へと足を踏み入れ、進み続けている。その先に何があるか全くわからないが、きっとまだ誰も見たことのないような場所へ私を導いてくれると信じている」。山下氏は「この作品は最初から最後までとてものめりこんで書いていたので、書き終えてからもなかなか作品世界から抜け出すことができなかった。多くの方々に自分の作品を読んでいただけることがとてもうれしく、この先も自分の描きたい世界を追求し、魅力的な世界を書き続けていきたい」と語った。
河出書房新社の小野寺優社長は主催者あいさつで、「ネット書店のレビューやランキングという他人の評価を基に本を買う傾向が非常に増えた。私たちは、多数決の読書から、自分の目で選ぶ自分のための読書を取り戻さなければいけないと思っている。今日の受賞作は、全ての人にとっての5つ星かはわからないが、賛否両論、侃侃諤諤の意見交換ができるであろう際立った個性を持った作品を送り出せた。弊社は来年創業130周年を迎える。これからも、新しい才能を見つけ応援していく作業を大切にして進めていきたい」と述べた。

『ゴージャスなナポリタン』が受賞/暮らしの小説大賞

産業編集センターが主催する第2回「暮らしの小説大賞」の受賞式が10月9日、東京・千代田区のマルノウチリーディングスタイルで受賞式が開かれた。今回は丸山浮草氏の『ゴージャスなナポリタン』が受賞した。丸山氏はフリーランスのコピーライター。受賞作の単行本は10月16日、産業編集センターから発売された。
同賞は、暮らしと小説をつなぐ文学賞として、2013年に創設。生活・暮らしの基本を構成する「衣食住」を募集テーマとしている。
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