全国書店新聞
             

令和6年8月1日号

日書連第36回通常総会 書店の未来開く施策、実現を 経産省「書店振興PT」、書店議連の動き活発化 矢幡会長「書店支援の風に乗る」

 日書連は6月20日午後1時、東京・千代田区の書店会館で第36回通常総会を開催し、会員44名(本人27名、書面17名)が出席した。矢幡会長は「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」(書店議連)や経済産業省「書店振興プロジェクトチーム」(書店振興PT)など書店支援の動きに期待を示し、「この風に乗りながら書店の未来が開ける施策を実現したい」と決意を示した。新年度の取り組みでは書店業界の維持・発展を最重要課題に、書店議連や経産省など関係省庁と連携して、キャッシュレス決済手数料の軽減、図書館との共存共栄、粗利益率改善などの問題に注力する方針を承認した。
 総会は石井和之事務局長の司会で進行し、冒頭、矢幡会長があいさつ。「コロナが5類に移行してからも書店業界は相変わらず厳しい状況」としたが、一方で書店議連や経産省「書店振興PT」に書店の窮状を訴えた結果、書店支援の施策が少しずつ動き始めたと強調。「風が吹いている。われわれはその風に乗って前に進み、書店業界を維持・発展させたい。風に乗りつつ、出版社や取次と一緒に書店の未来が開ける施策を実現したい」と訴えた。具体的な課題として「図書館との連携」「キャッシュレス決済手数料の負担軽減」を挙げ、書店の根本である「売上・粗利の改善」「配本の適正化」にも取り組まなければならないと意欲を示した。組織強化対策として「組合内部のDX化」にも言及した。
 議案審議では楠田哲久理事(鹿児島)を議長に選任し、第1号議案の令和5年度事業報告書、第2号議案の令和5年度財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金処分案、第3号議案の令和6年度事業計画案、第4号議案の令和6年度収支予算案、第5号議案の経費の賦課及び徴収方法、第6号議案の令和6年度借入金の最高限度額案、第7号議案の令和6年度役員の報酬額案――のいずれの議案も原案通り承認可決した。

[各委員会からの主な報告 図書館納入、キャッシュレス手数料など 経営圧迫する課題解決に取り組む]
 【政策委員会】
 矢幡会長は、書店経営環境改善運動について「書店が経営を続けるためには30%の粗利益率が不可欠という認識は広がっているが、実現に至っていない。図書館に納品する際の装備代の切り離し、キャッシュレス手数料など経営を圧迫している課題についても議論を重ねた」と報告。「経産省の書店振興PTに積極的に関わり、キャッシュレス手数料、公共・学校図書館の本の入札など粗利益率を圧迫している各種要因について解決の道筋を研究していきたい」と意欲を示した。
 また、書店議連が昨年4月にとりまとめた第一次提言で「不公正な競争環境等の是正」「書店と図書館の連携促進」「新たな価値創造への事業展開を支援」が盛り込まれたことに言及し、「経済産業省、文部科学省、文化庁、公正取引委員会の取り組みや見解も報告されている。これまで挙がった課題の整理ができてきたので、必要なところは政治力も借りながら経営改善に取り組んでいきたい」と訴えた。

[事業継承の好事例を収集・研究]
 【組織委員会】
 2024年4月1日現在の全国組合加盟書店数は前年比129店(4・8%)減の2536店になった。
 安永寛委員長は、引き続き各組合の運営状況を確認、支援するために総会資料を収集するとともに、書店主の高齢化が進む中、事業承継など廃業せずに事業を継続できた好事例を収集・研究していく考えを示した。
 【指導教育委員会】
 森松正一委員長は、万引防止出版対策本部の協力のもと、今年10月の日書連定例理事会に合わせ、全国万引犯罪防止機構理事の豊川奈帆氏(ウェリカジャパン代表)を講師に研修会を開催すると報告した。
 【広報委員会】
 深田健治委員長は、日書連と各都道府県組合の活動や事業について、機関紙「全国書店新聞」とホームページ「本屋さんへ行こう!」で情報発信したと報告。「組合員数が減少し、各組合内の情報交換と意思疎通が困難になる中、組合と書店をつなぐ機関紙とホームページの役割はますます大きくなっている」と述べた。
 【流通改善委員会】
 藤原直委員長は、毎年発売日励行本部委員会宛に提出している「雑誌発売日諸問題解決に向けた対応のお願い」要望書の眼目は「全国同時発売を目指して発売日格差の解消に努めてほしい」ということだが、物流2024年問題で京都、兵庫など一部の府県で逆に発売日が遅くなったと報告。「取次の進行の関係でもう少し早めることができないか、詰めていきたい」と述べた。
 また、週刊誌の合併号を廃止してレギュラー発売することや、休配日の日程決定に際して書店側の意向も反映されるようにすることを要望した。
 【取引改善委員会】
 柴﨑繁委員長は、送品・返品同日精算、支払いサイトの延長など書店の存続につながる取引関係の問題に広く取り組んできたと報告。読書推進活動の一環としてさまざまな自治体が18歳未満の子供がいる家庭に図書カードを配布していることを紹介し、「まだ図書カードの配布が行われたことがないという県組合は、ぜひ自治体に申し入れてほしい。そうすると子供たちが書店に来てくれる」と訴え、図書カード配布の予算化を求める運動推進に意欲を示した。
 【読書推進委員会】
 「書店くじ」からQRコードを活用した「読者還元祭」にリニューアルして、2023年で3年目を迎えた。春井宏之委員長は「応募総数は、春は3万2165件。秋は今回からスピードくじ形式を採用し、応募総数29万5359件と大幅に増加した」と報告した。2024年の「秋の読者還元祭」では、出版文化産業振興財団が事務局を務める秋の読書推進月間「BOOK MEETS NEXT」との連携を強化するとした。
 【書店再生委員会】
 平井久朗委員長は、各組合から報告される再販違反と思われる事例について、出版4団体で構成する出版再販研究委員会にその都度報告し、対応を求めていると報告。また、経済産業省の事業再構築補助金、中小企業庁の事業継承・引継ぎ補助金、厚生労働省の業務改善助成金など各種補助金・助成金を紹介し、書店の採択事例を具体的に紹介したと報告した。
 今後の方針については、「キャッシュレス手数料の改善や報奨金制度など、書店収益改善のための施策を提案していきたい」と説明した。

[書店と図書館の取引実態調査へ]
 【図書館委員会】
 髙島瑞雄委員長は、日書連MARCのユーザー数は全国で4000校に達したと報告。また、洋書(英語教材)情報の取り込みが完了し、この4月から提供を開始したとして、「洋書データは他社の図書館蔵書登録用データにも収録されていない。強力なアピールポイントになる。日書連MARCの更なる普及を推進する」と述べた。
 また、4回にわたって開催された「書店・図書館等関係者における対話の場」に言及し、入札による値引き、装備費が本と別途計上されないなど、取り上げられた課題に取り組むため、まずは書店と図書館の取引実態調査についてアンケートを行う意向を示した。

矢幡会長 総会あいさつ

 昨年コロナが5類に移行してから社会のいろいろな分野で売上げが上がっているが、書店業界は相変わらず厳しい。ネット社会への移行が進み、スマホを見ている人やゲームをしている人が多い。書店の仲間も減っており、危惧している。
 そうした中、書店議連(街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟)、経済産業省が設置した「書店振興プロジェクトチーム」など、いろいろなところで書店の窮状を訴えている。(書店支援の施策は)まだ実現には至っていないが、少しずつ動いており、風が吹いている。われわれはその風に乗って前に進み、書店業界を維持・発展させたい。
 内容としては図書館との連携、キャッシュレス手数料の負担軽減などの話はあるが、書店の根本である売上げを上げる、粗利を上げる、配本を適正化することにも取り組んでもらわないといけない。
 日販がコンビニ配送からの撤退を決めるなど輸送問題もあるが、出版社に出版流通を維持するための応分の負担を求めるだけでなく、これまで書店にとって流通上の欠点だった部分についても改善してほしい。出版社、取次、書店は三位一体、一緒に本を売っている。書店のことも考えながら施策を打ってほしい。
 風に乗りつつ、皆様と一緒に書店の未来が開けるような施策を実現したい。
 組合員数が減っているが、そうした組合内部の問題も考え、意見を出し合いながら頑張っていきたい。組合の内部からDX化を進めることも大切で、手を入れていきたい。
 今日は皆さんから忌憚のない意見をいただきたい。

日書連理事会 再販契約書の変更、研究へ 矢幡会長中心に ワーキンググループ設置

 日書連は6月20日午前10時半、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催。再販売価格維持契約書第6条(2)で、官公庁等の入札に応じて納入する場合、同契約書の規定は適用しないとされているが、その条文の変更を研究するためワーキンググループを設置することを決めた。メンバーは矢幡秀治会長、書店再生委員会の平井久朗委員長と小川頼之委員、図書館委員会の髙島瑞雄委員長と木野村匡委員。副会長も随時参加できる形にする。
 各委員会からの主な報告事項は以下の通り。
 【政策委員会】
 出版業界の発展に貢献した物故者を讃える出版平和堂「第56回出版功労者顕彰会」の顕彰候補者として、元日書連理事、元神奈川県書店商業組合理事長の長谷川義剛氏(長谷川書店)を推薦することを決めた。長谷川氏は2023年1月2日に逝去した。
 【組織委員会】
 安永寛委員長は、全国45都道府県の加入・脱退状況について、3月は加入なし・脱退14店で14店純減、4月は加入3店・脱退17店で14店純減、5月は加入1店・脱退5店で4店純減と報告した。
 【指導教育委員会】
 万引きなど店舗のロス対策コンサルティングを行うウェリカジャパン代表取締役、全国万引犯罪防止機構理事の豊川奈帆氏を講師に招き、10月17日に書店会館で研修会を開催すると、森松正一委員長が報告した。
 【流通改善委員会】
 藤原直委員長は、返品運賃実態アンケート調査を実施すると報告した。返品運送の形態、加盟書店が対象となる返品運賃の設定の有無および一般運賃との差、運賃算出方法(重量、梱包数)を聞く。
 【読書推進委員会】
 春井宏之委員長は「秋の読者還元祭2024」の実施要項を提案し、承認された。
 【図書館委員会】
 「公共図書館への納入に関するアンケート」を実施する。納入価格(定価、値引き、入札により変動)、装備作業の有無、装備作業費(書店負担、図書館から書店に支給)、使用しているMARCなどについて聞いている。髙島瑞雄委員長は「公共図書館納入をめぐる現状と課題について、文部科学省と話をする際の資料として役立てたい」と述べ、協力を求めた。

長野総会 4支部から2支部に再編 定款改正で理事定数も変更

 長野県書店商業組合は6月11日、千曲市上山田温泉の「旬樹庵」で第40期通常総会を開催し、組合員46名(委任状含む)が出席した。
 冒頭あいさつした柳澤輝久理事長(西澤書店)は、「長野県の組合員数は54店、全国の組合員数もピーク時の5分の1まで減少した。電子書籍やネット販売の普及で書店を取り巻く環境は厳しさを増している」と述べた。一方、書店議連や、本に関わる人が一丸となって読書の秋を盛り上げる「BOOK MEETS NEXT」など書店支援の動きも拡大していると指摘し、「個々の書店では難しくても、組合として一致団結し、出版社や取次とも協力して取り組めば道は開ける」と力強く語った。
 総会は滝沢健太郎総務委員長の司会で進行。西沢佳夫副理事長の開会の辞の後、西沢副理事長を議長に議案審議を行い、令和5年度事業報告、収支報告、令和6年度事業計画案、予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。
 定款改正では理事「16人以上21人以内」から「12人以上15人以内」、支部再編では4支部(東信、北信、中信、南信)から2支部(東北信、中南信)に変更することを決めた。
 この後、来賓の県中小企業団体中央会の荒川氏が祝辞を述べ、唐澤宏彰副理事長の閉会の辞で第1部を締めくくった。
 第2部では来賓7社によるあいさつとPRタイムのあと、奈良井功副理事長の紹介でトーハン・渡部恵太支店長と日販・安藤直也支店長の講演会「これからの書店業界はどう変わるか!」を開催。書店、出版社、取次、運送会社が参加した。
 前澤芳美副理事長の謝辞、唐澤副理事長の弊会の辞で第2部を終了。引き続き懇親会を行い、親睦を深めた。(高村善明広報委員)

全国万引犯罪防止機構総会 顔認証共同利用で万引抑止 「渋谷プロジェクト」1年間の実績報告

 全国万引犯罪防止機構(万防機構)は6月18日、東京・千代田区の主婦会館プラザエフで2024年度通常総会を開催し、会員127名(委任状、書面含む)が出席。東京・渋谷の大盛堂書店、啓文堂書店渋谷店の2書店が共同で防犯カメラの顔認証機能を利用し、再犯を未然に抑止することでロス率の低減を実現するプロジェクト「渋谷書店万引対策共同プロジェクト」(渋谷プロジェクト)のここ1年間の状況を報告した。
 はじめにあいさつした竹花豊理事長は、ここ1年間の取り組みを振り返り、「組織的に万引犯罪を行っているベトナム人を中心とした事案に対して、警察全体で大きな力が注がれるようになってきた。この間、私たちが警察当局に被害情報を提供してきたことで、組織的な万引犯罪についてあまり語られることのなかった警察庁内部でも最高幹部を含めて話題に出てくる状況になっている。1、2月には大阪、福岡、熊本などで相次いでベトナム人窃盗団が摘発、新聞で大きく報道されたことが起因となって、ユニクロでの万引対策が著しく進んだ。万引対策は経営陣と従業員が気持ちを一つにして進めることで大きな成果を得られることが実証された」と述べた。
 また、設立20年となる同機構の歩みを振り返り、これからどんなことをしていくかをディスカッションする場を来年3月、東京・江東区の東京ビッグサイトに設ける予定であることを明らかにし、広く参加してほしいと呼びかけた。
 議案審議では23年度事業報告、収支決算報告、24年度事業計画、収支予算計画などすべての議案を原案通り承認可決した。
 役員の選任では理事19名、監事2名を選任。総会終了後に開催した臨時理事会で竹花理事長を再任した。
 活動報告では、万引防止出版対策本部の阿部信行事務局長が渋谷プロジェクトの23年2月から24年1月の実績を説明した。万引行為を認知した事案数は34件で前年比9件増、登録人数は18人で同2人減。再来店が16人で同6人増だったため、事案数が増えた。情報蓄積の成果で登録率は52・9%で同27・1ポイント減となり、抑止は9人で同7人増、未補足は25人で同3人増、捕捉は0人で同1人減となった。阿部氏は「昨年5月にコロナが5類に分類変更されたことで事案数が増えている。現在、平台の商品から棚出しの商品に被害が拡大している状況」と報告した。
 書店での万引犯の人物像については「出版情報の収集に長けている。新刊発売日に確実に当該書籍を盗り、棚出しの新刊を即座に見つける。万引が容易と分かれば1日に何回も入店する。防犯カメラ・顔認証カメラの弱点を知っている。一度万引した本が売れ筋と判断すれば何回もアップする」と説明。「渋谷プロジェクトの顔認証の共同利用がいかに重要かということを理解していただけたと思う。売上競争をしても万引防止では協業するというのが、万防機構の方針。書店ごとに考え方に違いもあるが、犯人情報の共有について問題点をクリアしていきたい」と話した。

東京組合青年部総会 原点に返り増売企画に注力

 東京都書店商業組合青年部は6月21日、東京・中央区の中小企業会館で第34回総会を開催し、令和5年度活動報告、収支決算報告、令和6年度活動計画、収支予算のすべての議案を原案通り承認可決した。
 総会終了後、会場を同区の銀座クラシックホールに移して懇親会を開催。あいさつした越石会長は「会長になって1年経ったが、所属する目黒・世田谷支部はこの1年間で3店舗が閉店した。売上不振が一番の原因だが、後継者不在の問題もある。正味、物流、キャッシュレス手数料など出版業界の課題にこれから取り組んでいく。東京都書店商業組合が先頭に立ち、青年部もサポートする。原点に立ち返って1冊でも多く本を売る企画を行っていきたい」と述べた。
 相談役の東京組合・矢幡秀治理事長は「書店をなくさないようにという風がかなり吹いてきた。書店も出版社も取次も一緒に風に乗り、業界を盛り上げていきたい」と呼びかけた。

書店組合総会スケジュール

 ◆神奈川県書店商業組合「第47回通常総会」
 8月26日(月)午後2時、横浜市神奈川区のかながわ県民センターで開催。

連載「春夏秋冬 本屋です」 ものの始まり何でも堺/東正治(大阪・東文堂書店 代表取締役)

 私の生まれた町、大阪府堺市の歴史を少しご紹介させて頂きます。
 日本のものづくりにおける製造業の歴史は、堺から始まったと言っても過言ではなく、様々なものを生み出してきた。
 例えば、現在でも国産自転車製造のシェアは約4割を占め、市内には工場が点在、博物館まで存在する。かつて、中国やポルトガル、スペインなど海外との貿易(日明貿易・南蛮貿易)が盛んで、海外の文化をいち早く取り入れてきた。
 戦国時代、刃物、傘、鉄砲、線香など「ものづくり」としての礎を築き、その時に訪れた宣教師ザビエルらは堺の隆盛ぶりに驚き、「東洋のベニス」と絶賛。
 また、堺は「君死にたまふことなかれ」で知られる与謝野晶子、豊臣秀吉に仕えた千利休(茶道を大成したわび茶の祖)など、今でも先人たちの偉業は語り継がれている。
 さらに、日本最大の前方後円墳として知られる仁徳天皇陵古墳(大仙陵古墳)を含む100数基からなる百舌鳥・古市古墳群は2019年にユネスコの世界遺産に登録され、エジプトのクフ王のピラミッド、中国の秦の始皇帝陵と並ぶ世界三大墳墓の一つに数えられる。
 大阪・堺はホンマええとこやさかい。ぜひ皆さんも訪れてみて下さい。

奈良組合「営業実態アンケート調査」 外商頼りの書店多数 後継者不在による廃業、深刻化

 奈良県書店商業組合(林田芳幸理事長)はこのほど、組合員書店を対象に実施した営業実態を問うアンケート調査の結果をまとめた。書店継続が大変厳しい状態にあることを改めて浮き彫りにした。8月1日に開く第40回通常総会で発表する。
 加盟27店のうち19店から回答があった。業態については、「店売のみ」はわずか2店、「店売・外商の両方」が11店で、「外商のみ」も6店あった。両方と答えた店でも8店で「外商が多い」とし、経営を外商に頼る店が多い実態が浮き彫りとなった。
 書店以外の収入についても問うたが、「有る」が12店(63%)。この中には「書店が副業」とした店も5店あった。
 事業継承について、「後継ぎ」は10店(53%)が「ない」と答え、うち6店は「廃業やむなし」と答えた。
 教科書納入については13店が「有る」と答えたが、うち7店が「減った」と回答、厳しい現状がうかがえた。公立図書館や学校図書館に納入している店は16店(84%)を数えたが、図書館流通センターとの競合、入札制度、装備などを問題点にあげた。
 さらに、書店継続への問題点として「取次配本」「ネット書店」「仕入正味」「キャッシュレスの手数料」「事業継承」などが挙げられ、「雑誌の仕入冊数が減った」「入札制度が厳しい」などの苦情コメントも寄せられた。
 奈良県でも近年、書店の廃業が相次ぎ、書店ゼロの自治体も全国で数番目に多い。
 (靏井忠義広報委員)

東海日販会 三輪会長「まず紙の本を作る」 原点回帰の姿勢打ち出す

 東海日販会は6月12日、名古屋市千種区のホテルルブラ王山で第68回通常総会を開催し、愛知、岐阜、三重3県の会員書店、出版社、日本出版販売関係者など180名が出席した。
 総会では、令和5年度事業報告、会計報告、会計監査報告、令和6年度事業計画及び予算案について、会員に事前に議案書を送付して審議し、すべての議案が原案通り承認されたと報告。令和6年度は書店社員セミナー、拡販企画、グルメの会、図書普及・社会貢献活動、親睦ゴルフ会などの実施を予定している。
 冒頭あいさつした三輪明邦会長(泰文堂)は「デジタル化が進む中、私たちは大切なものを失っているのではないか。スマホがあればほとんどのことができてしまう。書店人は、子供たちがこれから生きていくために必要な思考力や集中力を身に着けていけるよう、本と出合う場所を提供し続けなければならない。書店には人や社会を豊かにできる力がある。課題山積だが、もう一度原点回帰して、まずは紙の本を売っていきたい。出版社、日販、書店が一丸となって紙の本を盛り上げ、読書推進をしていこう」と呼びかけた。
 来賓あいさつで日販の奥村景二社長は、4月23日にオープンした「文喫 栄」に触れ、売上は好調に推移し、来店客の反応も良いと報告。「街の書店があり続ける心豊かな世界を実現させなければいけないと改めて実感した。そのために出版流通を持続させる。取次があり続けることと街に書店があり続けることは、我々としては同じ意味を持つ。書店経営の持続は何よりも大事。粗利改善、コスト低減などに取り組まなければならないが、まずは売上をどう作っていくかだ」と述べ、日販の諸施策を説明した。
 総会終了後、記念講演で作家の青山美智子氏が「私にとっての書店」をテーマに話した。また、同会の社会貢献活動として、愛知県を中心に子ども食堂・学習支援団体・ひとり親支援団体などの活動を支援する団体「愛知子ども応援プロジェクト」に図書寄贈し、藤野直子代表理事に目録を授与した。

出版科研調べ 5月期販売額は3・5%減 店頭では文芸、ビジネス、新書の好調続く

 出版科学研究所調べの5月期書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比3・5%減だった。内訳は、書籍が同0・4%増、雑誌が同8・1%減。雑誌の内訳は、月刊誌が同7・0%減、週刊誌が同12・4%減。書籍は微増ながらも2ヵ月連続で前年同月を上回った。
 書店店頭の売れ行きは、書籍が約1%減。文芸は約5%増、ビジネスは約4%増、学参は約2%増、新書本は約3%増と好調。雑誌は定期誌が約5%減、雑誌扱いコミックスが約7%減、ムックがほぼ前年並みだった。

日書連のうごき

 6月5日 学校図書館整備推進会議幹事会に事務局が出席。
 6月6日 文字・活字推進機構理事会に矢幡会長が出席。
 6月10日 日本出版クラブ理事会に矢幡会長が出席。公取協連合会総会に柴﨑副会長が出席。JPIC理事会に矢幡会長が出席。
 6月11日 公正取引委員会取引企画課訪問に矢幡会長、平井副会長が出席。三井住友カードとの意見交換会に矢幡会長、平井副会長が出席。
 6月12日 経済産業省第2回車座ヒアリングに矢幡会長、小川理事が出席。
 6月14日 太宰治賞贈呈式に事務局が出席。
 6月18日 経済産業省コンテンツ課との意見交換会に矢幡会長が出席。全国万引犯罪防止機構総会に矢幡会長が出席。
 6月19日 各種委員会。
 6月20日 出版物小売公取協総会。定例理事会。第36回通常総会。
 6月24日 角川歴彦氏の出版を祝う会に矢幡会長が出席。定期会計監査。
 6月25日 JPO定時総会に藤原副会長が出席。
 6月26日 セミナー「世界の神保町をめざす」に矢幡会長、春井副会長が出席。
 6月27日 日本図書普及株主総会に矢幡会長、藤原、春井両副会長が出席。読書推進運動協議会総会に矢幡会長、春井副会長が出席。
 6月28日 全国中小企業団体中央会理事会、総会に矢幡会長が出席。JPIC評議員会に春井副会長。

連載「生活実用書・注目的新刊」 『日本列島はすごい』(中公新書) 齋藤 一郎(遊友出版 代表取締役)

 伊藤孝著『日本列島はすごい』(中公新書 920円)は副題が森・森林・黄金を生んだ大地。日本はユーラシア大陸の東縁で土台ができ、やがて分離。3万8千年前に人類が上陸し、歴史を紡いできた。列島の成り立ちから、金や鉄や塩などの資源、活火山の多いこの列島での暮らし方を探るという試みである。
 高校の地学教科書では地形、地質、地球科学、気象、天文を広範囲で網羅している上に、最新の成果も記載されている。一方で4単位「地学」は全国高校の1割にも満たない授業だという。履修率が高校生の1%という現実は、もったいないと著者は語る。列島の資源を眺めると、奈良時代から平安に遣唐使を派遣できたのか、鎖国していた江戸時代に3千万人の人口を養えたのか、日本史の背景が読み取れる。
 「地学」を頭に入れながら『図説日本史通覧』(帝国書院 900円)を見ると、日本史がより詳しく一望できる。巻頭は入試に強くなる学び方や東西冷戦までの資料。旧石器時代に始まり、現代の日本の文化まで。後半に自然災害や歴代内閣一覧、年表、索引と歴史のQ&Aが付く。学参として作られたため安価。400ページオールカラー、解説は64ページという大冊なのでお買い得。