全国書店新聞
             

令和6年9月1日号

齋藤経産相、都内2書店を視察 「書店振興PT」 今夏めどに課題整理

齋藤健経済産業相は7月23日、東京都の王様書房(目黒区)と代官山蔦屋書店(渋谷区)を視察に訪れ、全国で減少が続く書店の現状や課題について経営者らと意見交換を行った。経産省が今年3月に設置した大臣直轄の「書店振興プロジェクトチーム(書店振興PT)」の企画の一環。齋藤大臣は、視察や意見交換を踏まえ、「今夏をめどに課題を整理する」と述べた。

視察には、小泉進次郎元環境相が同行した。王様書房では、柴﨑繁社長(日書連副会長)が店内を案内。地元の絵本作家にサインを書いてもらったり、来店客にあわせた品ぞろえを工夫したりするなど、街の書店ならではの取り組みを説明した。
齋藤大臣が現在、全国の4分の1の自治体に書店がないことに触れ、「そこで生まれた子どもは、書店の素晴らしさや、その存在も知らずに育つ。これは将来的に国力の低下につながる」と懸念を表明すると、柴﨑氏は「まったくその通りだ」と応じた。
柴﨑氏は、「いま一番望んでいるのは来店してもらうための施策で、例えば図書カードを配ること。これは国や都、区で実施してほしい。以前、目黒区や北区で実施したときは、やはり大勢のお客さんが来た。図書カードを配れば、書店に来たことがない人が来てくれる」と訴えた。
小泉氏は「子どもの頃、寝るときは父親に読み聞かせをしてもらった。今は自分が子どもたちに毎晩、読み聞かせをしている」といい、柴﨑氏と子ども向け絵本の話に花を咲かせた。
代官山蔦屋書店では、同店を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の増田宗昭会長、髙橋誉則社長兼CEO、鎌浦慎一郎執行役員TSUTAYA事業管掌の案内で店内を見て回った後、意見交換を行った。
齋藤大臣は「書店でたまたま手に取った一冊によって考え方が変わったり、世界が広がったりすることがある。書店の持つ一覧性は本当に重要で、他では代替できない」と指摘。「ウェブと図書館、書店の3つが共存する世界が望ましい。経産省でできることは限られるが、一歩でも二歩でも前に進めたい」と強調した。
髙橋氏は「出版流通業界の出版社、取次、書店の3構造のビジネスは75年くらいの歴史がある。ただ、時代は変わってもビジネス構造はあまり変化していない」と指摘。「書店は仕入れ方などを変えていかないといけないが、1社だけで解決するのは難しい。書店同士が壁を取り払って連携し、新しい流通の形を作らなくてはいけない」と述べた。
鎌浦氏は「我々は書店ゼロの街をなくすという思いで、全国でフランチャイズ展開をしている」とした上で、「例えば、欲しい本が30分以内に手に入る近くの書店が検索できるアプリを全国の書店横断で開発できれば、ECサイトにはないサービスになる」と語った。
増田氏は「(2018年、書店ゼロの状態が続いていた)軽井沢町で書店をオープンした。街に5軒あった書店が3軒や2軒になることはあっても、1をゼロにしてはいけない」と力を込めた。齋藤大臣は「今夏をめどに課題を整理し、政府に何ができるか検討したい」と述べた。

長崎総会 新理事長に川崎綾子氏 未加入書店の加入促進を

長崎県書店商業組合は7月27日、諌早市の「水月楼」で第37期通常総会を開催し、組合員20名(委任状含む)が出席した。
総会の司会進行は草野義広理事が務め、冒頭のあいさつで中山寿賀雄理事長(好文堂書店)から、今回の役員改選で、これまで36年務めた理事長を辞任するとの申し出があった。それから、古瀬寛二副理事長を議長に議案審議を行った。
令和5年度事業報告で、中山理事長は「当県でも3店の脱会があり、組合の存続自体も危ぶまれる状況になってきている」と述べた。事業報告、決算報告ともに原案通り可決承認した。
令和6年度事業計画案について中山理事長は、未加入書店の加入促進と、九州一円の雑誌発売日を「3日目地区」にするよう要望する案を説明した。事業計画案、収支予算案ともに原案通り可決承認した。
役員の改選では、選考委員を選んで理事者を発表し、全員承認した。その後、新理事長らを発表し、承認した。川崎綾子新理事長は「書店経営の厳しい中、頑張っていきたい」とあいさつした。女性理事長は、全国の書店商業組合で初めて。
総会終了後、来賓の長崎県中央会の若杉氏があいさつし、中央会の現状、補助金対策などについて説明した。続いて、テジマ運送の手島社長が運送業務の厳しい実態などを説明した。その後、懇親会を行った。

[長崎組合役員体制]
▽理事長=川崎綾子
(METRO PLUS)
▽副理事長=古瀬寛二(ながせや)波多賢三(育文堂)

(古瀬寛二広報委員)

 川崎 綾子氏(かわさき・あやこ) METRO PLUS社長。メトロ書店3代目。1972年長崎市生まれ。95年上智大学文学部卒業。2024年長崎図書納入協同組合理事長。

12月11日に出版販売年末懇親会

日書連は12月11日(水)午後6時、東京都千代田区の帝国ホテルで恒例の「出版販売年末懇親会」を開催する。
書店が主催する出版業界の懇親の場として、出版社、取次、業界関連団体などを招いて毎年行っている催し。同ホテルの本館2階「孔雀西の間」を会場に予定している。

大阪 「車座ヒアリング」開催 齋藤経産相が意見交換と視察

齋藤健経済産業相は8月6日、大阪市で府内の書店経営者4人と「車座ヒアリング」を実施し、書店が抱える課題や振興策などについて意見交換した。齋藤大臣はこれに先立ち、隆祥館書店を視察した。
齋藤大臣は、書店が1軒もない自治体が全国で4分の1に上ることに触れ、「書店の素晴らしさや、存在すら知らずに子どもが成長していくことは国力にも直結する事態。少しでも改善していきたい」と述べた。
大阪府書店商業組合理事長の深田健治氏(ブックスふかだ)は、「第1に、キャッシュレス決済の手数料の軽減化。第2に、出版物の軽減税率の適用や非課税化。第3に、粗利益が非常に少ない。雑誌が以前のように堅調に売れていないことから、多品種少量販売と顧客ニーズに沿う仕組みの再構築が必要。第4に、地域図書館には地元書店からの購入と連携をお願いしたい」と述べた。
戸和繁晴氏(トーワブックス)は、「30坪未満の書店では事業再構築できるスペースがない。ナショナルチェーンのカフェ導入では、加盟金だけで数百万円、什器備品・内装合わせて最低2000万円程度はかかり、償却に最低10年を要する。80坪の店舗で20坪のカフェを展開すると、最初の5年は返済ができても、残りの5年は競合店の出店などがあり返済ができない。現実的なカンフル剤として、小中高生の読書推進のために図書カードを配布していただきたい」と話した。
堀博明氏(堀廣旭堂)は、「公共図書館とコラボして茨木市の読書啓発イベントを実施したり、今年で13回目を迎える『BOOK EXPO』(経産省後援)では、普段営業に訪れない出版社との商談、作家さんとの語らいなどの場を提供したりしている。『大阪ほんま本大賞』や大阪読書推進会の『本の帯創作コンクール』などの取り組みもある。第三商材の扱いも検討しているので、キャッシュレスの料率低減を要望したい。また、教科書のデジタル化が急激に進み、流通形態の変化で廃業書店が多い」と述べた。
二村知子氏(隆祥館書店)は、「売上は30年前の3分の1。4分の1のときもある。家賃並みの固定資産税があり、さらに大阪府の最低賃金(1064円)が今秋から50円引き上げられるという。現在の粗利では経営ができない。本の持つ素晴らしさを伝えたくて13年前から『作家と読者の集い』のイベントを催しているが、作家さんのほとんどが東京在住で、イベントの会場費や謝礼、交通費などの経費がかかる。JPIC(出版文化産業振興財団)に申し込みをして年1回補助が出るが、継続的に実施するためには国にも応援してほしい」と要望した。
齋藤大臣は最後に、一度は書店がなくなった東京都狛江市内で今年6月に書店が復活した例を挙げ、出店を求める市民の声に後押しされて再開業が実現したとして、書店のインフラとしての価値を説明し、車座ヒアリングを締めくくった。

(石尾義彦事務局長)

岩手組合総会 理事長に玉山達徳氏

岩手県書店商業組合は7月18日、盛岡市のアートホテル盛岡で第35回通常総会を開催し、組合員34名(委任状含む)が出席した。
令和5年度事業報告、決算報告、監査報告、令和6年度事業計画案、予算案などすべての議案を原案通り可決承認した。また、役員の改選を行い、新たな理事に玉山達徳氏(東山堂)と赤澤桂一郎氏(さわや書店)、監査役に木村薫氏(一頁堂書店)を選任した。総会終了後に理事会を開き、新理事長に玉山達徳氏、副理事長に小原玉義氏(小原書店)と谷澤賢一氏(及新書店)が就任することを承認した。
新事業計画では、「菊池雄星文化プロジェクト 岩手読書感想文コンクール」(岩手日報社、日報岩手書店会主催)に今年も協力することを決めた。このほか、地域密着型の図書館整備促進事業の取り組みや、親子対象のイベントなどを実施することが報告された。
親子を対象としたイベントとしては、岩手組合主催の「こどもの本ブックフェア」が7月19日から3日間、盛岡市で開催され、入場者数2900名以上と盛況だった。多くのテレビや新聞に大々的に取り上げられ、イベント内容はもちろん、「まちの書店」減少の危機感や、子どもたちに本に触れて選ぶ喜びや読む楽しさを知るきっかけとしてもらうこと、自分の宝物の一冊を見つけようという趣旨などが紹介された。

(小原玉義広報委員)

奈良組合総会 本のある暮らし提案

奈良県書店商業組合は8月1日、橿原市の橿原オークホテルで第40回通常総会を開催し、組合員20名(委任状含む)が出席した。
総会の司会進行は川岸泰子副理事長が務め、林田芳幸理事長(啓林堂書店)のあいさつの後、荒井裕事務局長を議長に議案審議を行った。令和5年度事業報告、決算報告を藤木公博監事の監査報告の後、可決承認。令和6年度事業計画案、予算案を原案通り可決承認した。
林田理事長は、年末年始のスタンプラリーと「サン・ジョルディの日」のキャンペーンへの協力に感謝を述べた。新年度事業計画については「地域のお客さん、企業、施設などに〝本のある豊かな暮らし〟を提案、推進していく」と話した。
また、「奈良の書店組合は1896年、全国で最初にでき、約130年の伝統をもつ。変化への対応は重要だが、変えてはいけないことも大事にし、次の時代に引き継いでいこう」と呼びかけた。
続いて、兵庫県尼崎市で小林書店を営んでいた小林由美子さんの講演を聴いた。小林さんは今年5月、72年続いた書店を閉店。現役時代の取り組みについて話し、「いまを一生懸命生きれば、必ず未来は来る」「お客さんを育てるのは本屋、本屋を育てるのはお客さん」などと語った。
総会終了後、版元や取次、輸送関係者ら招待者約20名が加わって懇親会を開催し、和やかに親交を深めた。

(靍井忠義広報委員)

連載「春夏秋冬 本屋です」 こちょぶりじじい/小田原 健吾(愛媛・愛媛県教科図書マスヤ店 部長)

「船がひっくり返ったあ」。あっ君が玄関に転がり込んできた。川へ駆けつけると、幅100メートルほどの川の真ん中で小船が転覆しており、すぐに救助の船が到着した。
中学生になったばかりの僕とあっ君は、転覆した船に必死にしがみついている彼の救助を、足を震わせながら呆然と眺めていた。
彼が渡し船の船頭として赴任したのは、僕たちがまだ幼い頃だった。髭をたっぷりと蓄え、穴だらけの汚れた服を纏い、いつも船乗場へ下りる階段にどっかりと腰掛け、ダルマウイスキーをその蓋に注いで飲んでいた。
そして彼を有名にしたのは、奇声を発しながら、近くを通る子どもを捕まえて、くすぐるという恐怖の所業だった。小さな子どもたちはいつも、泣きながら逃げ回った。皆、彼を「こちょぶりじじい」と呼ぶようになった。
しかし、しばらくすると、船乗場は子どもたちでいっぱいになった。こちょぶりじじいは子どもたちを集め、地面に卑猥な絵を描き、また、時には上手に駒を回してみせた。僕もあっ君も、幼い頃は暇さえあれば船乗場へ通った。僕たちはチヌ釣りを教わり、そしてウイスキーを舐めると喉が焼けることを知った。
転覆からしばらく経ち、僕たちは久しぶりに船乗場に下りた。船は無く、ロープが水面に垂れ下がっていた。「そりゃクビになるよなぁ」。あっ君が次々と跳ねるボラを見ながらぽつりと言った。

大阪読書推進会総会 「帯コン」協力要請

大阪読書推進会は6月19日、大阪市の朝日新聞大阪本社アサコムホールで総会を開催した。大阪こども「本の帯創作コンクール」(帯コン)共催社の朝日新聞大阪本社、大阪出版協会、在阪取次、書店が出席した。
総会の司会進行は堀博明実行副委員長(大阪府書店商業組合副理事長、堀廣旭堂)が務め、戸和繁晴実行委員長(同、トーワブックス)の開会のあいさつに続き、宮川健郎会長(大阪国際児童文学振興財団理事長)があいさつした。
宮川会長は、「今年は第20回記念ということで、JPIC(出版文化産業振興財団)刊の『この本読んで!』の編集長に『帯コン』の記事の掲載を依頼した。この財団は読み聞かせに取り組んでいて、『この本読んで!』は大人が主な読者の新刊の絵本や読み聞かせの仕方を紹介する季刊誌。編集長から『本屋さんのためなら何でもする』との回答があった」と紹介した。
続けて、「私は、募集から最終選考、表彰式、展示会を含めて流れを辿るようにしていただき、次の第21回につなげる記事にしてくださいと言った。取材にあたっては皆さまのご協力をお願いします」と語った。
その後、朝日新聞大阪本社の北澤卓也総局長、大阪出版協会の矢部敬一理事長(創元社)のあいさつの後、出席者全員が自己紹介した。
続けて、虎谷健司実行副委員長(虎谷誠々堂書店)が事業報告、会計報告、事業計画、収支予算案を発表。すべての議案が原案通り可決承認された。このうち事業報告では、今年の光村図書の小学4年生の国語の教科書に本の帯の作り方が載っていると報告した。
最後に、日本書籍出版協会の岡本功大阪支部長(ひかりのくに)が閉会の辞を述べ、終了した。

(石尾義彦事務局長)

福岡組合理事会 「選書市」進捗報告

福岡県書店商業組合(安永寛理事長)は6月21日、福岡市中央区の福岡県教科図書会議室で定例理事会を開催した。
白石隆之副理事長が、9月25日に同区の電気ビル共創館みらいホールで開催する「九州選書市2024」に向けた進捗状況を説明。5月21日に198社に案内状を送付し、6月21日時点で114社から出展の回答があり、最終的には前回と同じくらいの出展社数を見込んでいると報告した。
白石副理事長は「より多くの書店に来場してほしいので、近隣の書店にも積極的に声掛けを」と呼びかけた。
事務局からは、教職員研修助成券の取り扱いが7月20日から開始との報告があった。取り扱い方法は昨年と変わらず、助成額は7000円。

(加来晋也広報委員)

【投稿】業界挙げて物流問題の解決を/大和郡山市 庫書房 庫本 善夫

今、全国的に書店が消えていくことが話題に上がっている。なぜ書店が消えていくのだろうか? 筆者が開業した1972年から2024年の現在までの営業活動などから現場で感じたことを交えて、書店が消えていく要因の一つとなっている出版物流について考えてみたい。
1970年代に全国には書店が約3万軒あったが、現在は3分の1以下に減少している。書店がない自治体が全国で急速に増えているというニュースもたびたび目にする。しかし、客注商品が書店に翌日届けられれば、状況はかなり変わるのではないだろうか。
以下に書くのは、業界関係者にとっては当たり前のことである。しかし、業界外の方にはこれを説明しておかないと、頓珍漢なアドバイスが飛び交うことになるのでご容赦願いたい。

[書店経営の実情]
もともと書店が儲からない仕事であることは、開業前後に読んだ数冊の書物の中に繰り返し書かれていた。「地域の文化に貢献するような志を持っていなければ、書店はやっていけない」という文言は、まさにその通りであったと感じている。
小売業者の平均的な粗利率の半分程度の2割前後の粗利では、儲けるのはそう簡単な話ではない。50年ほど前は、経営者に入る純利益率は3%ほどであったが、今はマイナスになっている。
ほとんどの出版物が委託制であることが制度的な救いであることと、原則的に定価販売が義務付けられていることにより、送られてきたものを店に並べ、残ったものを期限内に返品すれば、まず倒産するというようなことはない。
しかし、人件費や運転資金を考えると、実情は時代とともに厳しくなっている。稼ぎどころの雑誌の発行部数も、今後ますます減少するといわれている。開業当時は、国内で今の倍くらいの10億冊ほどの発行部数があったと聞いている。
一方、書籍については、開業当初から思うように入らないという事情は、今もそう大差ない。お客様からご注文いただいても、販売のピークを過ぎた頃にやっと入荷するようでは、お客様の期待に応えることもできない。
せめて注文品だけでもなんとかしたくて、あの手この手で調達を試みる。時には他店仕入れといって大きな書店へ買いに行ったり、アマゾンで調達したりすることもある。この注文品も昨今、ネットで注文すれば翌日には届く時代になり、街の書店はもうあてにされなくなっている。

[変わらない出版物流]
なぜあてにされないのか。開業した頃にはさほど問題ではなかった物流が、今も根本的に変わっていないからである。
開業当時は、お客様からのご注文があれば、短冊といわれる複写式の注文書に書名・出版社名・著者名・価格などをできるだけ詳細に書き込み、毎日のように出版取次会社へ送るのが仕事だった。
今ではパソコンに向かってISBNコードを利用して物を特定したうえでネット発注ができるので、発注情報を即時に送信できるだけでなく、あわせて在庫状況まで知ることができるようになった。50年間の時代の進歩と業界内の志ある方々の努力のつながりによって、望んでいた情報化がここまで進んできたことには感謝しかない。
しかし、ここから先に問題がある。出版社や倉庫にある書籍の出荷のためのピッキングなどの効率化は進んできているが、物が物流業者に渡されるのは即日とは限らない。「取次渡し日」といわれる出荷日が毎日即日などということはまれで、1週間のうちの何曜日とかにまとめて出版取次に引き渡されることがほとんどで、いまだに主流である。
さらに、出版取次が引き取った図書を個別の書店にストレートに送り出すということはまずない。地域ごとの流通センターに送られて書店別の棚に分けられ、そこから書店別に出荷されることになる。
最近の輸送事情として、貨物の運賃が従量制に変わったため少ない荷物でも出荷されるようになってきたが、以前は個数による運賃計算が主流であったため、荷物がまとまらないと送ってもらえないこともあった。
うまくいっても1週間から10日かかっていたし、1カ月くらいかかることもよくあった。品切れ通知の紙が封筒に入って送り返されてくるのにも、相当日数がかかっていた。
近年、こうした問題を解決するために、少し余分な費用はかかるが、個別宅配便のように即日出荷してもらえる仕組みもできている。ただ、これも問題ありで、特に急ぐときに多少の余分な費用がかかる場合はよいとしても、倉庫が別になっているために、在庫が一般流通用ではなく、余分な費用がかかる特別品のほうにしかないというケースは、粗利率の低い書店側にとっては、かける手間に見合わないどころか、足が出かねない。

[改善進まぬ運搬方法]
問題は、50年ほどの間、「混載便」といわれる運送コストをより安価に抑える運搬方法について、根本的な改善が進んでいないことにある。
ヤマト運輸が小口運送のサービスを始めたのが1976年で、東京―大阪では翌日配達を実現した。さらに全国翌日配達の仕組みを完成させ、「クロネコ便」としたのが78年である。全国的に翌日配達が可能になってから40年以上が過ぎたが、出版物の輸送はどうだろうか。
お客様はすでに翌日配達される社会を普通として生活しているから、注文すれば翌日に手に入るという感覚をお持ちである。店頭の書店員さんたちの悔しさはいつまで続くのだろうか。これはごく一部の書店を除いて規模の大小を問わずに共通する、特に地方にある書店には大きな問題であるはずだ。にもかかわらず、注目度が低いように思われるが、あきらめられているのだろうか。
この問題を解決できれば、ネット書店と対等に勝負できる。それ以上に、現物を手に取ってみることができるリアル書店のほうに強みが出る。世間でできていることが、なぜできないのだろうか。
国が助けてくれるというのだから、業界を挙げて、国の力を借りてでもこの出版物流問題を解決することの優先度は高いと思うが、いかがだろうか。田舎の零細書店の声である。

大分 キャッシュレス講習会 仕組みや利点など学ぶ

大分県書店商業組合は7月9日、大分市の大分図書でキャッシュレス講習会を開き、組合員10名が出席した。中小企業診断士の堀寿弘氏を講師に招き、キャッシュレス決済の仕組みやメリット・デメリット、男女別・年齢別の考え方、導入に対する補助金の種類などについて学んだ。
二階堂衞司理事長(二海堂書店)はあいさつで、「キャッシュレス事業者から導入費用不要などの話を聞いて導入した店は多いと思う。都市部ではキャッシュレス決済が大半を占める店もあると聞く。大分県はそこまでいっていないが、今後は大部分がキャッシュレス決済になると思われる」として、「各店がどのように取り組むか。今日の講習を判断材料としていただきたい」と述べた。
講習終了後は、組合員と講師との質疑応答などが活発に行われた。

(大隈智昭広報委員)

6月期販売額は9・5%減 店頭では文芸、学参、児童書が好調 出版科研調べ

出版科学研究所調べの6月期書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は、前年同月比9・5%減だった。内訳は、書籍が同8・6%減、雑誌が同10・5%減。雑誌の内訳は、月刊誌が同8・9%減、週刊誌が同19・1%減。週刊誌は休刊などで不振が続き、2割近い減少となった。
書店店頭の売れ行きは、書籍が約7%増。文芸は約17%増、文庫本は約3%増、ビジネスは約6%増、学参は約11%増、児童書は約9%増、新書本は約4%減だった。雑誌は定期誌がほぼ前年並み、雑誌扱いコミックスが約5%減、ムックは約5%増だった。

大阪 10月4日に帯コン最終審査

大阪府書店商業組合(深田健治理事長)は7月13日、大阪市北区の組合会議室で定例理事会を開催した。
読書推進委員会の虎谷健司委員長は、第20回大阪こども「本の帯創作コンクール」について、9月26日に第1次審査会、10月4日に最終審査会を開くと報告した。
石尾義彦事務局長は、今年度の大阪府青少年健全育成優良店表彰候補店に、河内長野市の松田書店を推薦することが決まったと報告した。
経営活性化・事業増売委員会の二村知子委員長は、毎日新聞「論点」に経済産業省の「書店振興プロジェクトチーム」について取材を受けた記事が掲載され、齋藤健経産相と面談し、街の小書店の立場を訴えたと報告した。

(石尾義彦事務局長)

スマホだけでタッチ決済対応 三井住友カード「stera tap」

三井住友カードは、スマートフォンをタッチ決済端末として利用できる「stera tap」のサービスを、全国の書店商業組合の組合員向けに特別なプランで提供する。
キャッシュレス端末を購入しなくても、スマホに専用アプリをインストールすれば利用できるため、初期費用、月額使用料ともに無料で、決済手数料は業界最安水準の実質1・98%(注)。
さらに、9月末までにAndroid版の「stera tap」を契約した組合員には、特別にAndroid OS搭載スマホを無償で提供する。
「stera tap」はSMBC GMO PAYMENTとの契約となる。専用アプリの提供元はGMOフィナンシャルゲート。
(注)契約料率は2・70%。そのうち、0・72%を後日キャッシュバックするキャンペーンを11月末まで実施中(上限10万円)。

※Androidは、Google LCCの登録商標。

【問い合わせ先】
三井住友カード
(東京)03―6636―8478
(大阪)06―7732―3007
営業時間=午前10時~午後5時(年中無休、12月30日~1月3日除く)

小学館 「国語大辞典」改訂へ

小学館は7月25日、東京都千代田区の本社ビル講堂に報道関係者を招き新企画発表会を開催した。冒頭、相賀信宏社長は「小説、漫画、アニメ、図鑑など幅広いラインアップをそろえた。昨年から力を入れているアクセシビリティもアップデートする」と説明した。
続けて、新規プロジェクトとして『日本国語大辞典』の改訂に着手すると発表した。相賀社長は「2032年の公開を予定している。日本語の大切さをしっかりと残していくことに関しても重要な作品。これから8年大切に育て、公開することを楽しみにしている」と意気込みを語った。
『日本国語大辞典』は、1915~19年にかけて刊行された『大日本国語辞典』とその修訂版(冨山房)を継承し、小学館が72年に初版、2000年に第二版を刊行。「日本唯一の大型辞典・用例主義・各界研究者による確かな知識」の3点を特色としている。
今回の作業では「三つの改訂軸」として、①デジタル版での公開、DX推進=クラウド上でのデータ共有、編集支援システムや自動組版の仕組みの構築など、新しい技術で辞書の作り方を大きく変え、得られた成果はインターネットを通じて段階的に公開、②より古く、より新しく=より多くの用例を採集。さまざまな分野の知見を集約し、適宜最新で確かな研究成果を反映、③新項目を追加=3万~5万語の新項目立項を予定。古い言葉でも用例の見つかった場合は追加立項を検討――を掲げている。
当日は第三版編集委員代表の金水敏氏(大阪大学大学院名誉教授、放送大学特任教授)が登壇し、「第三版の編集に携わることができるのは大変光栄。日本語を愛するすべての人にとって貴重な資源で、人類全体の発展にも貢献できると信じている。日本の歴史的資料はものすごい価値があり、それがひとつの辞書の中に収められ、その語彙的資源が自由に使える時代になったことを第三版で実感・体験してほしい」と語った。
このほか発表会では、作家の朝井リョウ、河﨑秋子、女優の佐久間良子、女優でエッセイストの室井滋、美術史家の山下裕二の各氏がそれぞれ自著を紹介した。

連載「生活実用書・注目的新刊」 『百歳まで歩ける人の習慣』(PHP新書) 齋藤 一郎(遊友出版 代表取締役)

伊賀瀬道也著『百歳まで歩ける人の習慣』(PHP新書、1100円)は、「脚力と血管力を強くする」が副題。歩くことが、いかに良いのかを説く。歩行を支えるのは目、耳、皮膚、筋肉、関節など。このバランスを測るのに壁から50センチ離れ、素足で立ち、左右どちらかの足を5センチ上げて、1分立てれば良好である。歩数は1日5000歩で、心疾患、脳卒中、認知症の予防になり、7000歩で動脈硬化、骨粗鬆症が改善できるという。
毛細血管は血管の9割以上を占めるが、毛細血管が元気になる食品としては、ヒハツ(胡椒の一種で別名ロングペッパー)、シナモン、ルイボス茶が効果的とされている。脚力を強くするトレーニング法、血管を強くする運動、夕方が効率が良いという歩き方など、具体的な方法を解説する。
池谷敏郎著『100歳まで切れない、詰まらない! 血管の老化は「足」で止められた』(青春新書、1100円)も足の血管力の高め方を語る。その場で足踏みする、肩の力を抜いて腹をへこませ、手を揺らすなどの簡単なエクササイズも紹介する。
足の老化のサインも見過ごせない。①歩くスピードが遅くなる②冷え、しびれ③間欠性跛行④足がつる⑤傷が治りにくい。歩く健康法。