全国書店新聞
             

令和5年6月1日号

粗利改善、組織改革に重点/矢幡秀治理事長を再選3期目の新体制が始動/東京組合総代会

東京都書店商業組合は5月18日、東京・千代田区のホテルメトロポリタンエドモントで第47回通常総代会を開き、総代34名(委任状含む)が出席。役員改選で矢幡秀治理事長(真光書店)を再選し、3期目の新体制がスタートした。矢幡理事長は、粗利改善と組織改革を重点課題に組合活動を進めるとともに、デジタルを活かした書店の活性化に取り組む方針を掲げた。
総代会は井之上健浩常務理事(久美堂)の司会、柴﨑繁副理事長(王様書房)の開会の辞で始まり、矢幡秀治理事長があいさつ。
矢幡理事長は、雑誌の不振や、物価高による消費者の家計防衛意識の高まりを背景に販売が厳しくなっている書店の現状を危惧。「書店だけでなく出版社、取次、そして書店議連のような出版業界以外の人たちにも『書店を守ろう』という話が徐々に広まりつつある。『書店が減少するのは時代の流れ』と思われるのが一番怖い。書店が減少して知識や文化に触れることがなくなれば非常に恐ろしいことが起こる。なぜ我々は本屋をやめずに本を売り続けるのかということを、いろいろな人に伝えてほしい」と呼びかけた。
組合活動については、コロナの影響で新年懇親会は中止したが、日本教育公務員弘済会東京支部の学校図書助成事業、出版社から提案された増売企画、読者謝恩図書カードの発行・販売、東京都中小企業団体中央会の委託事業を活用した「木曜日は本曜日」習慣化プロジェクトなどを行ったと報告。「皆さんのご協力で成果が出てきている。こうした活動に今後も取り組んでいく」と手ごたえを口にした。
組合の重点課題では、粗利改善運動について、大手出版社との意見交換だけでなく取次と話し合いの機会を設けたいとし、「もう少し目に見える形のものができればと考えている」と述べた。また、支部員の減少で存続が危ぶまれる支部が出てきていることに危機感を示し、組合への加入促進を図るとともに組織改革を進めていきたいとした。
出版業界の取り組みでは書店議連への働きかけについて言及。日書連として、出版物への消費税軽減税率の適用、キャッシュレス手数料等の書店負担経費の軽減、官公庁や図書館への入札時の値引き抑制などを求めていると説明した。
最後に、「今、デジタルの進行で時代が大きく変わっている。それで紙の本がなくなるというのではなく、デジタルをうまく使って本と本屋をアピールすることを考えていかなければいけない」と結んだ。
続いて、議長に片岡隆氏(ブックスページワン)を選任して議案審議を行い、全ての議案を原案通り承認可決した。
共同受注・デジタル委員会では、日本教育公務員弘済会東京支部より「22年度学校図書助成事業」を受託し現在納入業務を行っていると報告。再販・発売日・取引改善委員会では、「雑誌作成上の留意事項」の改訂以降、陳列・配達時に支障をきたすかさ高の付録が増えていると指摘した。指導・調査委員会は、「ロス対策」をテーマに3年ぶりに書店経営研修会を開催したと報告した。組織委員会の報告では、昨年に支部長会を開いて各支部の現状を聴取したと説明。今後の支部のあり方やエリアでの活動について引き続き検討していくとした。事業・増売委員会では、「読者謝恩図書カード」を出版社等18社の協賛で2万5百枚を発行・販売したこと、出版社への増売協力を積極的に行ったことを報告した。「木曜日は本曜日」習慣化プロジェクト特別委員会からは、著名人20名が選書した本を組合員書店で毎週木曜に販売、組合YouTubeチャンネルで各著名人が本屋の魅力を語る動画を公開するなど、週に一度本屋に足を運んでもらう取り組みを展開し、期間中の対象書籍の売上は平均2倍超になったと報告があった。
令和5年度事業計画は、支部及びエリアの組織改革と活性化推進、正味改定ワーキンググループによる出版社・取次との交渉、休業店を除く全組合員参加型の増売運動の実施、日本教育公務員弘済会東京支部の学校図書助成事業への協力、「木曜日は本曜日」プロジェクトの成果普及とITを利用した書店の広報活動・増売運動の継続実施、読者謝恩図書カードの販売拡大――などの方針を決めた。
支部規約一部変更の件では、支部員の減少に対応するため、副支部長、支部会計、支部幹事、支部監査に関する部分を変更する案を承認した。
任期満了に伴う役員選任では理事35名、監事3名を承認。議事終了後、支部功労者3名を表彰した。総代会終了後、新理事による理事会を開き、選挙の結果、矢幡理事長を再選した。
[東京組合役員体制]
○印は新任
▽理事長=矢幡秀治(真光書店)
▽副理事長=平井久朗(ビーブックス)柴﨑繁(王様書房)○小川頼之(小川書店)
▽常務理事=井之上健浩(久美堂)○山邊真次(海洋文具)秋葉良成(江戸川書房)○田中紀光(明昭館書店)澁谷眞(四季書房)
[支部功労者表彰]
渡部満(教文館)田野倉治郎(智識堂書店)小泉忠男(小泉書店)

青森市図書館の納品事業で成果/本の日プレゼント企画を実施/青森総会

青森県書店商業組合は5月10日、青森市のアラスカ会館で第36回通常総会を開き、組合員22名(委任状含む)が出席した。
総会は県組合事務局の武田豊文氏(成田本店)の司会で進行し、成田耕造理事長(成田本店)があいさつ。成田理事長は、書店の空白地帯が全国の市町村で拡大していることに憂慮を表し、「青森県でも15町村に書店がない。原因として、ネット通販、電子書籍、人口減少だけでなく、地元にお金が落ちない仕組みがある。組合では、青森市の図書館納品事業に1年をかけ、実績を上げてきている。これから少しずつ増やしていき、組合に落ちるお金を増やしていきたい」と今後の方針を示した。また学校図書館については、市議会に図書館整備の予算化に関する請願をしたが不採択となっており、引き続き市議会議員と今後の方向性を含めて話し合いを進めていきたいと述べた。
日書連に関する事業では、春・秋の「読者還元祭2022」と、「心にのこる子どもの本」新学期・夏休みセールと秋冬セールを実施。また、読書推進活動補助費を活用して、「本の日」プレゼントキャンペーンを実施した。応募用紙1万部を作製し、ポスターと共に組合員に配布。期間中に700円以上購入したお客様が応募でき、A賞、B賞、C賞(各5名)及び図書カード(500円×50名)の計65名にプレゼントしたと報告した。
続いて成田理事長を議長に議案審議を行い、令和4年度事業報告、収支決算報告、令和5年度事業計画案、収支予算案など第1号から第6号議案まで全ての議案を原案通り承認可決した。(伊藤篤広報委員)

日書連第35回通常総会

日書連は6月22日(木)午後1時、東京・千代田区の書店会館で第35回通常総会を開催し、令和4年度事業報告、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金処分案、令和5年度事業計画案、収支予算案、経費の賦課及び徴収方法、借入金最高限度額案、役員の報酬額案、任期満了に伴う役員改選について審議する。
また、当日午前10時半から定例理事会を開催する。

「春夏秋冬本屋です」/「40年ぶりの再会」/神奈川・金文堂信濃屋書店取締役・山本雅之

5月の連休明け、片付けで物置に入った時、茶色に変色した文庫本と約40年ぶりに再会した。将棋に魅せられ惹かれるきっかけになった本だ。
この5年、将棋界の話題を独り占めにしているのは、中学生でプロデビューし、いきなり29連勝から順調に昇段し、次々とタイトルを奪取している、20歳の藤井聡太だ。6割超えの勝率で一流プロと言われる世界で、藤井は常に8割超え。タイトル戦の敗戦は一度もなく、現時点で名人奪取から全タイトル8冠をうかがう破竹の勢いである。野球の大谷翔平と将棋の藤井聡太――並外れたこの2人にはただただ驚愕するばかりだ。
将棋との出会いの1冊とは、講談社文庫の中平邦彦著『棋士・その世界』(現在は絶版)だ。この本を40数年前に読み、米長邦雄、内藤國雄、升田幸三ら一流棋士のエピソードで、棋士とは桁違いの頭脳の天才・奇才でありある種変人の側面もある、考えの及ばない人種と知り、ぞっこんになった。私は棋力アマ5、6級のヘボ将棋だが、この本を読んでから将棋の世界には常に注目してきた。
近年は店にいても、お客さんと会話する機会が減りつつある。「この作家が好き」「また面白いのを紹介して」「これを子どもに読んであげる」等、話や自慢が長すぎて辟易することも減った。1冊の本、1人の作家を通して生涯の伴侶が得られたら、書店人としてこの上ない喜びだ。

声明採択「進むべき未来示す」/長寿者19名、永年勤続者324名表彰/第62回全出版人大会

日本出版クラブは5月8日、東京・千代田区のホテルニューオータニで第62回全出版人大会を開き、出版社、取次、書店など関係者約400名が出席。出版界の先人たちの業績を称え、「この先の100年の道筋をつけるのが私たちの仕事」と記した大会声明を採択し、長寿者19名と永年勤続者324名を表彰した。第1部の式典終了後、政治学者の姜尚中・東京大学名誉教授が講演した。第2部では4年ぶりに懇親会を開催した。
はじめにあいさつした野間省伸大会会長(講談社)は、大会声明について「大きな変化の局面にある出版界において、私たちの進むべき未来を示唆するもの」と話した。
廣野眞一大会委員長(集英社)は、大会声明の起草、大会記念品の風呂敷のデザイン、講演会の講師の選定にあたって基準とした考え方を説明し、大会声明を朗読した。
来賓の簗和生文部科学副大臣、吉永元信国立国会図書館長の祝辞に続き、長寿者を代表して実教出版の小田良次社長に小野寺優大会副会長(河出書房新社)から寿詞と記念品、永年勤続者を代表して建帛社の加藤義之氏に堀内丸惠大会副会長(集英社)から表彰状と記念品が贈呈された。
小田氏は入社から今日までを振り返り、「教科書の進化とともに歩んだ46年だった。大判化・カラー化・ビジュアル化と進化し、紙の上での表現が限界に近くなった時、次の表現手段として出てきたのがデジタル化。現在ほぼすべての教科書にQRコードが付き、スマホで読み取ると動画や資料を見ることができる。問題はその製造コスト。紙の教科書の安い定価の中から発行者自らが捻出しなければならず、相当数が出なければ赤字というのが実情。紙代・印刷代・製本代が高騰しているが、教科書は定価を上げてコストを吸収することはできない。少子化の問題もある。この会社、この業界でまだやり残したことがあり、今日の祝賀を糧として残りの人生を歩んでいきたい」と話した。
加藤氏は「建帛社の『帛』は絹織物の意味。古代中国の帛書のように、人の心を数千年にわたり伝えていくという思いが込められている。本日は長い歴史を持つ出版文化の流れの中に身を置いているという認識を新たにし、身が引き締まる思い。出版界の一層の発展を祈る」と謝辞を述べた。
式典終了後の講演で姜尚中氏は、同氏が総監修を務めた集英社創業95周年記念企画『アジア人物史』について、「アジア各地域・各時代の専門家がコラボしてくれた。日本の東洋学の蓄積の分厚さに感銘を受けている。出版こそ日本で最も競争力のある産業。日本だからできるものがある。他にはない試みとして成功したのではないかと自負している」と語った。
【大会声明】
今から100年前の1920年代、つまり大正の終わりから昭和の初めは、出版界が急激に拡大した時代でした。
1923年の関東大震災を乗り越えるかのように、雑誌と書籍の流通が結びついて日本全国にはりめぐらされた販路を通してベストセラーが続々と生まれ、週刊誌も誕生し、円本の文学全集による教養熱が高まり、雑誌『キング』は100万部を突破しました。ラジオやレコードとのタイアップが広まり、性科学など女性のための教養書も刊行されます。書店が増え、再販制度の原型が現れ、印刷技術も進歩し、出版点数は飛躍的に増えました。まさにベンチャー精神に満ちあふれ、現在に至る出版ビジネスの基礎が確立した時代と言えます。
ちなみに1920年代のヨーロッパでは、初めて「ロボット」という言葉が登場する戯曲『R.U.R.』が書かれ、映画『メトロポリス』が上映されました。ともに人工知能と人間社会の軋轢を描くもので、現在のAI論争の先駆けと言えます。
その後、戦時下と占領下における出版統制と言論弾圧という試練がありましたが、1950年代に再び出版界全体の立て直しが始まり、1953年にはこの日本出版クラブが設立され、今年70周年を迎えました。
このように、私たちの先人たちは、困難な時代においても実にたくましく働き、知恵と知識を、多様な価値観を、心を豊かにする物語を、日常を彩る娯楽を、孤独な魂には居場所を、提供してきました。そして、目の前の厳しい現実をも乗り越える、精神の自由をこの社会に広めてきました。
今、出版界は大きな変化の局面にあります。デジタルプラットフォームが情報の流通を大きく変え、コロナ禍はその変化を加速しました。さらにAIの進歩はクリエイティブの本質とは何かを私たちに突きつけています。近年、出版業界の未来に悲観的な声が聞かれるのも事実です。
このような状況で思い出すのが、生涯、自由な精神を追い求めた堀田善衞さんです。
移動し、行動し、世界中の人々と交流し、真にグローバルな視座で考え続けた方でした。そして、どんな状況においても悲観せず、ひたすら観察した方でした。そのための補助線として、鴨長明やゴヤ、モンテーニュら、かつて戦乱の時代を観察した人々の思考と感性を丁寧にたどりました。
そんな堀田さんは「現在は過去と未来を内包する」、そして「歴史は繰り返さず、人これを繰り返す」と語っています。
我田引水ではありますが、かつて出版文化を築いた先人たちの精神を想像すると、そこで私たちが何よりも大切に受け継ぐべきは、冒険心に満ちあふれ、精神の自由を追い求めた、そのたくましい魂ではないでしょうか。
堀田さんはとにかく考え続けた方でしたが、私たちが今の出版界あるいは社会の課題についてどんなに考えても、答えは得られないかもしれません。しかし、何がわからないのかがわかれば、それは誰かと共有できます。個人を超え、組織を超え、業界を超えてつながることもできるはずです。
そして現在の出版界には、先人たちが残してくれた大きな財産があります。それは社会からの信頼です。今も多くの読者と才能は、書物というメディアに特別なリスペクトを抱いてくれています。また、書店が地域のコミュニティとして再評価される動きも、各地で起きています。
100年にわたる先人たちの仕事の上に私たちが今立っていることに感謝しつつ、この先の100年の道筋をつけるのが私たちの仕事であることをあらためて確認し、第62回全出版人大会の声明といたします。
2023年5月8日
第62回全出版人大会

2日間で2万6千名が来場/上野の森親子ブックフェスタ

「上野の森親子ブックフェスタ2023」(主催=子どもの読書推進会議、日本児童図書出版協会、出版文化産業振興財団)が5月4~5日、東京・台東区の上野恩賜公園と周辺施設で開催された。今年は出版業界が一丸となって展開する読書推進活動「BOOKMEETSNEXT」の一環として実施した。
晴天に恵まれた会場は2日間で延べ約2万6300名の来場者で賑わった。今年も作家・作家団体の協力で、各出展者のブースや会場内に設けられたイベントブースには多くの作家が訪れ、サイン会やおはなし会・手作りワークショップなど来場した親子と楽しい時間を過ごす姿が見られた。会場での精算は昨年同様、図書カードやクレジットカードなどによる完全キャッシュレス決済。分散レジ方式を取り入れ、レジ待ちの行列は改善された。
「子どもブックフェスティバル」には64社が出展、絵本・児童書を中心に約3万7000冊が会場内に展示され、2日間の売上は約3150万円にのぼり、3日間開催の昨年を上回った。
5月5日には周辺施設の国際子ども図書館で小説「夢見る帝国図書館」の著者・中島京子氏の講演会を開催し、大人も子どもも熱心に聞き入っていた。

神奈川県書店商業組合賞など80作品選ぶ/第17回大好きな本絵画コンテスト

神奈川県書店商業組合(松信裕理事長)は4月26日、横浜市中区の神奈川新聞本社で、絵本を題材にして主人公などを描いてもらう「第17回大好きな本絵画コンテスト」の審査を行い、神奈川県書店商業組合賞など各賞の受賞作品計80点を選出した。
同コンテストは神奈川組合と神奈川新聞社などで構成する神奈川県読書推進会が主催。県内在住・在園の保育園や幼稚園の園児を対象に実施し、今年は1357点の応募があった。コロナ禍の影響で過去2年は減少傾向にあった応募数だが、今年は昨年に比べて250点以上増と上向いた。
神奈川県生涯学習課社会教育副主幹の山根千知氏、神奈川組合の山本裕一副理事長ら5名が審査にあたり、神奈川新聞社の関係者も協力。応募作品には名作、力作、感動作や、審査員の理解を超える迷作もあり、審査では苦心・苦労する場面も。その結果、神奈川県読書推進会賞1点、神奈川県書店商業組合賞2点、神奈川新聞社賞2点、全国共済賞5点、ぺんてる賞20点、優秀賞50点、計80点の受賞作を選出した。
表彰式は今年も見送ることとした。受賞作品は6月17、18日の両日、横浜市中区の全国共済ビルで展示する。(山本雅之広報委員)

書店組合総会スケジュール

 ◆福島県書店商業組合「第39回通常総会」
 6月24日(土)午後1時、郡山市の郡山商工会議所で開催。

日書連のうごき

4月5日 JPO運営幹事会に事務局が出席。定期会計監査。
4月10日 決算書作成業務。
4月11日 全出版人大会事務局打合せ会に事務局が出席。
4月12日 出版ゾーニング委員会に渡部副会長が出席。
4月14日 税務申告書作成業務。
4月17日 政策委員会に矢幡会長、藤原、柴﨑、渡部、春井、安永、深田各副会長、髙島委員長、小泉、葛西両監事が出席。
4月20日 図書コード管理委員会に藤原副会長、志賀理事が出席。JPO運営委員会(Web)に春井副会長が出席。
4月24日 JPICの韓国書店等視察に矢幡会長、春井、深田両副会長。
4月25日 雑誌コード管理委員会に柴﨑副会長が出席。
4月28日 「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」総会に矢幡会長が出席。読進協常務理事会に矢幡会長が出席。中小小売商連絡会に事務局が出席。

「日本絵本賞」大賞は『PIHOTEK北極を風と歩く』(講談社)

全国学校図書館協議会は4月25日に第28回「日本絵本賞」の最終選考会を行い、4点の受賞作品を決定した。大賞は『PIHOTEK北極を風と歩く』(文=荻田泰永、絵=井上奈奈、講談社)、絵本賞は『がっこうにまにあわない』(作・絵=ザ・キャビンカンパニー、あかね書房)、『ねことことり』(作=たてのひろし、絵=なかの真実、世界文化社)、『橋の上で』(文=湯本香樹実、絵=酒井駒子、河出書房新社)が選ばれた。表彰式は6月22日に開催予定。

「九州選書市」4年ぶり開催へ/9月12日、福岡・電気ビルみらいホールで

福岡県書店商業組合(安永寛理事長)は4月19日、福岡市中央区の組合会議室で定例理事会を開催し、「九州選書市2023」を9月12日(火)に福岡市中央区の電気ビル共創館みらいホールで開催することを決定した。開催時間は午前10時~午後4時を軸に調整中。
九州選書市はコロナ禍のため中止が続いていたが、今年は4年ぶりに開催する。今後のスケジュールは、組合内に実行委員会を立ち上げ、5月中旬に取次、運輸を交えて第1回の会議を開催。6月上旬に出版社に出展の案内状、7月中旬に各書店に案内状を送付する。なお、トーハン会、日販会も同時期に開催を予定している。
福岡県教職員互助会研修助成券については、第44期実績は前期比87・3%と報告した。未使用のまま期限切れになる券も多数あることから、特に外商部門を持つ書店は先生方に利用促進の積極的な声掛けをしてほしいと求めた。
(加来晋也広報委員)

とっぷりつかるなら読書がいいね!/兵庫組合×中高生×けんごさんがコラボ/推薦図書24冊を選書

兵庫県書店商業組合は、中高生のインターネット依存やそれに伴うトラブルを防止するための取り組みとして、読書を奨める事業「どっぷりつかるなら読書がいいね!」を4月から開始した。兵庫県、兵庫県教育委員会が後援。
この事業は令和4年度からスタート。自治体や教育関係者、保護者から高い評価を受けている。今年度は推薦図書24冊を選び、毎月1冊からの読書を推奨する。中高生が16冊、兵庫組合が3冊、小説紹介クリエイターのけんごさんが6冊を選書し、それぞれ推薦理由も添えている。兵庫組合では、事業内容や推薦図書を掲載したポスターを作成し、県下の中学校・高校に送付した。
6月18日には「脳科学から見たオンライン読書講演会」として、東北大学加齢医学研究所助教・榊浩平氏の講演会「夢をかなえる脳と心の育て方~未来のカギはスマホに負けない強い心」を開催する。兵庫組合では「組合関係者にも聞いていただきたい」と参加を呼びかけている。また、10月28日には「読書にどっぷりつかって~学生さんからの報告」として、広島県福山市・盈進中学校の教諭と読書部の生徒が、教科として行われている読書科と、そこから生まれた読書部の活動を報告する。参加申込は電子メール(bk320@tea.ocn.ne.jp)で受け付けている。
事業の詳細や選書ラインナップは兵庫組合ホームページ(https://hyogobook2018.jimdofree.com/)、または「どっぷりつかるなら読書がいいね!」公式LINEアカウント(https://lin.ee/v5uaSEh)で。(森忠延理事長)

総会議案を説明/北海道理事会

北海道書店商業組合(志賀健一理事長)は4月6日、札幌市中央区の北海道建設会館で定例理事会を開催。6月19日に開催する第47回通常総会の事業報告、事業計画案、収支決算報告、収支予算案について事務局が説明し、審議した。
(事務局・髙橋牧子)

「本業の復活」へ近藤社長が決意/出版社との取引条件見直しに言及/全国トーハン会代表者総会

トーハンは4月27日、東京・文京区のホテル椿山荘東京で2023年度全国トーハン会代表者総会を開き、書店、出版社215名が出席。近藤敏貴社長は、2022年度決算で本業の「取次事業」が4期連続赤字の見通しと報告。今後も出版流通を持続していくためには業界の収益構造自体にメスを入れる必要があるとして、物流コストを賄えていない出版社に対し取引条件の見直しも視野に入れ交渉していくとの考えを示した。
代表者総会は、4年ぶりに出版社も招待しての開催。冒頭であいさつした近藤社長は、今年最終年度を迎える中期経営計画「REBORN」について言及。「『本業の復活』と『事業領域の拡大』の2つを基本方針に掲げ、特に『本業の復活』は、出版流通を持続可能な形で再構築し、街の文化拠点としての書店の復権を目指して様々な施策を打ち出してきたが、出版業界と取次業の現状を考え、もう一段階進化していく必要性を感じた」と述べ、4月からの新役員体制と、事業部制組織に刷新した機構改革の狙いを説明した。
22年度の実績は、単体売上高3813億円、前年比5・6%減で、経常利益は単体・連結とも黒字の見込みだが、取次事業は経常赤字が見込まれると報告。「『REBORN』計画中、4期連続で本業は赤字という非常に厳しい結果だ。効率販売の徹底と、大型法人の帳合切替えもあり売上高とシェアは拡大しているが、利益につながっていない。取次事業は構造的な赤字状態で、はっきり言って異常な状況だ。既存構造のままでは、もはや出版流通は成立しない。業界の収益構造そのものへメスを入れる必要がある。今後、コストが賄えていない出版社に対して、取引条件の見直しも視野に入れたご相談をさせていただく。出版流通を未来につなげるという当社の使命を全うするため、決意と覚悟を持って経営判断した」と述べた。
そして本業の復活に向けて、①マーケットイン型出版流通の具現化、②リアルとデジタル両面での事業展開、③物流拠点再配置と輸配送改革――の3つを推進すると説明。この中で①については、新仕入配本プラットフォーム「enCONTACT」、大日本印刷(DNP)との協業プロジェクト、適正仕入と実売改善のもとに返品率を改善し、出版流通のサプライチェーン全体でコストを最適化し、書店利益の改善を図る「マーケットイン型販売契約」の3つの施策を武器に出版流通を再構築していくとした。また②については、メディアドゥと連携し、NFT施策や店頭電子書籍販売、電子図書館事業を推進。新たな店頭付加価値を創出し、書店のデジタルビジネス参画をサポートしていくと述べた。
この他、近藤社長が理事長を務める出版文化産業振興財団の業界改革について「BOOKMEETSNEXT」の開催や、書店議連との連携、韓国書店業界視察などを説明した。
続いて「全国トーハン会プレミアムセール2022」の表彰式が行われ、プレミアムセール全国第1位の東北トーハン会青森支部などを表彰した。
23年度施策説明「TOHANCOMPASS」で川上浩明副社長は、22年度営業成績や店頭POS推移を説明した後、本業の復活に向けた全社重点施策を説明。enCONTACTの利用状況について4月21日時点で利用出版社は約600社、新刊点数ベースの占有は75%、利用書店数は約2100店舗と報告した。23年度は、出版社が主導する従来の仕入から、出版社別仕入計画にenCONTACT経由の書店事前申込みを反映した数字を基にするトーハン・書店主導仕入に転換し、効率販売、返品減少で利益改善につなげていくと説明。そして、業界の収益構造見直しについて出版社との交渉をもう一段進めていくとし、「運賃協力金は満額回答を目指した交渉を続けるが、特に物流コストが補えていない出版社にはその状態を是正すべく、踏み込んだ話をさせていただく。公正性や公平性の観点を重視してお話ししていきたい」と述べた。
全社重点施策ではこのほか、マーケットイン型販売契約の拡大や、DNPとの協業で桶川書籍流通センターの稼働やP0D(オンデマンド印刷)流通の展開などについて説明。また主要営業施策として、NFT技術を活用した店頭活性化の諸施策や、書店オペレーション支援、外商支援などを説明した。

生活実用書・注目的新刊/遊友出版・齋藤一郎

NHK朝ドラになった牧野富太郎は、文久2年(江戸末期)の生まれ。
大場秀章著『牧野富太郎の植物愛』(朝日新書810円)は土佐の佐川で酒造りと小間物を売る生家に誕生し、植物分類学を94歳まで研究し続けた牧野富太郎の評伝。
父を39歳、母も追うように亡くし、5歳の富太郎は祖母に育てられた。仲間も無く身体も弱く、兄弟も無い幼少の富太郎は虫や草木に親しんだ。
寺子屋や蘭林塾で儒学を学び、名教館に通い、漢文や四書五経を勉強するうち、明治7年に正式な小学校ができる。すぐ入学するも富太郎はすでに12歳になっていた。路傍の草にも親しみ、生涯草木の分類学を追求した植物学者の実像を描く。
田中伸幸著『牧野富太郎の植物学』(NHK出版新書930円)は牧野の業績を中立的に検証し、自然科学から考察。
牧野が命名した植物の数が書物、新聞、ネットなどでバラバラなのを、著作などから拾いつくすと、1369種の学名を発表したが正解となる。発表には命名規約があって、規則に満たない命名は無効になるのである。それでも日本植物につけた学名の数は一番多い。牧野富太郎の植物研究や普及活動の真価を探る。『牧野富太郎自叙伝』は講談社学術文庫にある。

3月期は前年比5・9%減/コミックは昨年11月以来のプラス/日販調査店頭売上

日本出版販売調べの3月期店頭売上は、前年比5・9%減となった。雑誌は前年に分冊百科創刊号が好調だった影響で週刊誌が落ち込んだ。コミックは人気作品の新刊発売の影響で0・1%増と、22年11月以来の前年超えとなった。
雑誌は6・3%減。月刊誌は「月刊コロコロコミック4月号」「小学一年生2023年4月号」(ともに小学館)などが売上を牽引した。週刊誌は、ワールドベースボールクラシックのプレビューを特集した「SportsGraphicNumber1069号」(文藝春秋)や、「anan2023年3月15日号」(マガジンハウス)が売上を伸ばした。
書籍は8・9%減と厳しい状況が続く。文芸書は、『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)、『魔女と過ごした七日間』(KADOKAWA)などが好調だったが、0・4%減と前年超えには至らなかった。
コミックは0・1%増とわずかに上昇。雑誌扱いコミックは、「ONEPIECE105」「呪術廻戦22」(ともに集英社)などの人気コミックが好調。書籍扱いコミックは『ファイブスター物語17』(KADOKAWA)や『鬼の花嫁2』(スターツ出版)などが売上を牽引した。